<出逢った頃の2人>


  今回は、まだミッション授業が始まる前のお話。
  日曜日の商店街を、一組の男女が歩いていく。年齢はどちらも高校生くらいかと思われる。
  普通ならば、デートと思うだろう。しかし…
男「ったく!キャルと由羅はどこ行ったんだよ!」
女「アンタがちゃんと見てないから悪いんでしょう、ロフェル」
  男のほうはロフェル・クォーラル。家庭の事情で最近まで海外にいたバイリンガルだ。
  女のほうはパティ・ソール。口より先に手が出ると専ら噂されている。
ロフェル「んだとパティ。俺の所為だってか?」
パティ「キャルさんも由羅さんも、アンタの向こうにいたんでしょうが。じゃあ、居なくなったのに気が付かなかったアンタの責任じゃない」
ロフェル「そ、そうかもしれないけどさ…」
パティ「何よ。文句あるって言うの?」
ロフェル「…いや、もう良いです」
  どうやら、連れを捜しているようだ。

  そんな彼らを少し離れた場所から見つめる四つの瞳に、彼らが気付くことは無かった。
由羅「どう、キャル君。二人の仲は進展しそう?」
キャル「いや、難しいと思うな俺は。ロフェルもパティもある意味で頑固だからな」
  ロフェルとパティが捜している、由羅とキャルである。
  何故か、キャルの手には小型双眼鏡が握られている。
由羅「ま、今日一日使えば何とかなるでしょう」
キャル「そんなものかねぇ?」
由羅「そんなものよ。さ、その間は私たちも買い物してましょう?」
キャル「ん?…ま、それもそうだな。行くか」
  由羅の意見に軽く同意して、キャルも物陰から立ち上がった。

  さて。何故こんなことになっているのかというと、話は5日ほど前に遡る。

  その日、キャルは大学部の廊下を歩いていた。彼自身は高3なのでまだここで講義を受けていたわけではなかったが、長刀部の先輩に借りていたものを返しに来たのだ。
  何気なく歩いていると、突然、誰かが背後から覆い被さってきた。
?「キャ〜ル君、久しぶり!」
キャル「うわっ!」
  驚いて振り払ったキャルが振り返ると、そこに居たのは少々見知った顔だった。
キャル「な、なんだ由羅か。驚かすなよ」
由羅「ごめんなさいね。でも、一月ぶりだったから懐かしくって」
  あまり悪いと思っていない様子の由羅に笑顔を向けながらも、キャルは心の中で呟いた。
キャル(そうか。あれからもう1カ月が過ぎたんだな。…早いもんだな)
  この一ヶ月前に何があったかは…『悠久legend特別編2 交じり逢う刻、三人の騎士』を参照してください。
由羅「でね、キャル君。1つ頼まれて欲しい事があるんだけど。良いかしら?」
キャル「ああ。俺に手伝えるなら手伝うけど?」
  両手を合わせて頼む姿勢を作っている由羅に、キャルはあっさりとうなずいてみせた。
由羅「そう?ありがと。実はね、次の日曜日に買い物に行きたいの。それでね、……」
  耳に囁いた由羅の提案に、キャルは苦笑しながらも同意した。

  そして日曜日の朝。駅前に集まった面子は、ロフェル・キャル・由羅そしてパティだった。
ロフェル「おいキャル。どうしてここにパティが居る!」
  キャルに向かって言ったのだが、それに答えたのはパティだった。
パティ「何よ!わたしが買い物に来たら駄目だって言うの?」
ロフェル「別にそこまで言ってねえだろうが。純粋に何故居るのかを聞いただけだろう?」
パティ「わたしは由羅さんに誘われて来たのよ。そう言うアンタはなんでここに居るのよ!」
ロフェル「俺はキャルについて来てくれって頼まれたんだよ」
由羅「ハイハイハイー。ここでのおしゃべりはおしまい」
  割り込んできた由羅のおかげで、二人の言い合いが止まった。
キャル「まあ、折角来てくれたんだし。ロフェルもパティも買い物を楽しもう。な?」
  キャルの言葉に、ロフェルもパティもしぶしぶといった感じでうなずいた。

  そして、現在に至る。(長かった…)

  今、ロフェルとパティはとある店に差し掛かった所だ。
パティ「あ…」
  その店の名前に気付き、パティが少し足を止めた。
ロフェル「ん?どうしたパティ」
パティ「あ、ううん大した事じゃ無いんだけど。このお店で売ってたペンダントが綺麗だったなー、って思い出して」
  振り返ったロフェルにパティが素直に話したところ、
ロフェル「へー。お前でもアクセサリに興味あるんだな」
  とても意外そうな声が返ってきた。
パティ「な、何よ!どうせわたしにはペンダントなんて似合わないですよーだ!」
  怒ってそっぽを向いてしまったパティに、ロフェルが笑いかける。
ロフェル「悪かったって、パティ。そう怒るなよ」
  それだけ言って、ロフェルは当然のごとく店に足を向けた。
パティ「ち、ちょっとロフェル!」
ロフェル「なんだよ」
  面倒そうに聞くロフェルに、パティは少し慌てて言った。
パティ「あ、アンタここの店に入って何する気?」
ロフェル「だから、お前欲しいものがあるんだろ?買ってやるから来いよ」
パティ「い、いいわよ。買ってもらう義理なんて無いしそれに高いって!」
ロフェル「いいからいいから。ほら、行こうぜパティ」
パティ「う、うん……」

  二人の行動を向かいの服店から眺めていたキャルは、驚くような声で由羅を呼んだ。
キャル「おい由羅。あの二人、あの宝石店に入っていったぞ」
由羅「本当に?あそこの商品は高いから買えないと思うんだけど。もしかしてロフェルクンってお金持ちなのかしら?」
  首をかしげる由羅の手には、紙袋が数枚ぶら下がっている。全てキャルのおごりだが、今は関係ない話だ。
  しばらくして、ロフェル達が出てきた。
キャル「あっ、出てきたぞ」
由羅「あら本当。…でも、何も買ってないみたいねぇ」

  彼らの言うとおり、ロフェルは少し寂しそうに店を離れた。
パティ「ほらぁ。だから高いって言ったじゃない」
  横を歩くパティは、少し残念そうな顔をしている。
ロフェル「…にしたって、高いにもほどがあるだろう?」
  先ほど見た値段を見て、ロフェルは小さくため息をついた。
  そのまま少し歩くと、前方にアクセサリの屋台が見えてきた。
ロフェル「…そうだな。買ってやるって言っちまったしな」
パティ「え?どうかした?」
  パティに返事することなく屋台に歩いていき、最初に目に付いたペンダントを手に取る。
ロフェル「おっさん。これくれ」
おっさん「1300円だね」
ロフェル「おう。サンキュ」
  短い遣り取りで買い物を済ませ、少し離れたところにいるパティの元に帰った。
ロフェル「ほら、パティ」
パティ「え?これわたしに?」
  パティの受け取ったペンダントは、小さな天使が二人で緑色の宝石を抱えている感じのつくりで、全体が銀のような光沢を示している。
ロフェル「まあな。さっき買ってやるって言ったペンダントが買えなかったからさ。代わりって言っちゃなんだけど」
  なんだか照れているロフェルに、パティがそれを付けてから言った。
パティ「ありがとロフェル。これ、大事にするね」

  そして、またもや遠くから眺めていたキャルと由羅。
キャル「なんとかなりそうだな。あの二人は」
由羅「でしょう?やっぱり両思いだって思った私の直感は正しかったって事ね」
  そう言った由羅の持つ荷物は、先ほどの倍くらいはあった。
キャル「この分だと、このまま放っておいても大丈夫だな。帰るか」
由羅「ええ。キャル君、今日は色々とありがとうね」
キャル「いや、別に構わないさ。バイトで給料入ってきたところだったしね。ただし、こんなに買うのは今回限りだぞ」
由羅「分かってるわよ」
  そして、そのまま去っていくキャルと由羅であった。

  その後、ロフェルとパティはいろいろな所を周って、家に帰ってきたときには結構遅くなってしまっていた。
パティ「ロフェル、今日はありがとう」
ロフェル「んな改まらなんくてもいいって。今日はキャルと由羅が…」
  ロフェルはそこまで言って凍りつき、次の言葉は二人同時のものとなった。
二人「キャル(さん)と由羅(さん)の事忘れてたー!」
  しばらく顔を見合わせていたが、やがてどちらからとも無く笑いがこみ上げてきた。
  そのまま笑いつづけた後、ロフェルが涙の浮かんだ顔で言った。
ロフェル「まあ、あの二人なら大丈夫だろ」
パティ「そうね。なんだかんだ言ってわたしたちよりも年上だし」
  そんな会話のあと、ロフェルは微笑んでこう言った。
ロフェル「パティ。また、買い物行こうな。今度は、本当に二人だけで」
パティ「そ、そうね。考えとくわ」
  さすがに恥ずかしかったパティは、そう言って家の中へと入っていった。
  扉に手を掛ける直前、ロフェルを振り返りながらパティが言う。
パティ「また明日ね、ロフェル」
ロフェル「ああ。またな」
  こうして、ロフェルとパティの日曜日が幕を閉じたのであった。

おわり


楽屋裏?

作者:はい、と言うわけで今回は『ロフェルとパティのはじめてのでぇと・SSバージョン』ということでした。
テイル:ところで、どうして楽屋裏に私が呼ばれるのでしょうか?
作者:まあ、今回はテイルさんのリクエストでしたので。
テイル:まあ、良いですけど…。
作者:今回は、何度か出張で来ていただいているにも関わらず主役として書いたことの無かったロフェルさんの事についてということで。
テイル:どうしてもネタに詰まって、キャルさんと由羅さんの登場となったわけですね。
作者:はい。ま、私的には良い表現になったと思います。途中、書いててあまりにも恥ずかしかったので省略した場面がありますけど。まあ、それは秘密、と言うことで。
テイル:ここで公言してしまっておいて、何がどう秘密なんでしょうかね?
 まあ、何はともあれ皆様からのご意見やご感想をお待ちしております。
作者:それでは。短いですがこのあたりで。
二人:さようならー。

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