ELIGHBLE BLOODS 第7話
【BLOODY EAGLE・玖珂 雅斗】



 
 ジリジリジリジリ………!!!
 うううぅ〜、やかましい……もっと寝かせろぉぉぉ………
 ジリジリジリジ―――バァンッ!
 …………よし、静かになったな。もう一回寝よ。
「起きてよぉ〜」
 ゆさゆさゆさ………
 誰かが安眠を貪ってる俺を起こそうと体をゆさゆさゆさゆさ揺らしている。まったく、ウゼぇな。
 体にかぶせている毛布を掴み鼻の頭まで引っ張って、俺の体を揺すっているその手を振り払うために体を横にする。しかし、それでもしつこく体を揺すってくる。なんてしつこい奴なんだ。
 ………ん?俺って一人暮らしのはず………んん!?じゃ、俺の体揺すってんのは誰だ?泥棒か?いや、泥棒はわざわざ家の主を起こすわけないじゃん。
 俺は自分の体を揺すっている奴のツラを拝む為に、毛布をずらして顔をそっちに向ける。すると、カーテンが開いているのかまぶしい光が目を刺激した。
「うぐぐぅ〜。灰になるぅ〜」
 そのまま、またもや俺は毛布を上げる。今度は頭までだ。
「あうぅ〜起きてってばぁ!」
 ポカポカポカポカポカポカ………
 ぐあっ!?今度は殴り掛かってきやがった!何気に顔面狙いだし、くそ!
「だぁー!やかましー!俺様の眠りを妨げる奴は何処のどいつだぁ!!」
 毛布をダバァ!と盛大に宙に舞わせながら、俺はベッドから飛び起きた。宙を舞った毛布は、地球に引かれて地面に落ちるかと思いきや、そのまま俺を起こそうとした人物の頭に降りかかった。パニくる毛布人。
「あわわぁ!?真っ暗だよぉー!」
「……んあ?」
 しだいに寝ボケていた頭が覚醒してくる。すると目の前には毛布をかぶった奴がバタバタと暴れていた。
 なんだ、これは夢の中か。じゃ、もっかい寝よ。
「夢じゃないよ!」
 毛布をカバッと取りながら怒鳴った奴は、叉紗だった。
「軽いジョークだ。気にすんな」
 半分はマジだったけどな………
「ふぁ〜……うしっ、と」
 大きなアクビをひとつしてから、軽い腕のストレッチをやった後、俺はベッドの上に毛布を戻し、着替えようとした。……が、
「……おい」
「ん?なに?」
「着替え……」
「へ?」
 こ、こいつ、まだわからんのかい!?
「着替えるから出てけっつってんだよ!」
「うにゃぁ〜〜〜!!」
 バァンッ!!
 俺の怒鳴り声にビビッたのか、ものすごい勢いで俺の部屋から出て行く叉紗。まったく、これから先が不安で一杯だぜ。
 
 着替えも終わり、俺は部屋から出てキッチンの方へ行くと、そこでは叉紗が包丁を振り回していた。とてつもなくシュールだな、オイ!
「なななななにやってんだお前は!?」
 慌てて叉紗から包丁を引っ手繰ると、叉紗は俺に不満げな顔を見せた。なんだ?こいつは何がしたかったんだ?
「あぁ〜!せっかくボクが手料理作ってあげてたのに、何するのさ!?」
「りょ、料理?」
 ふと、料理というキーワードから視線をキッチンの上に移す。そこには、料理とも美術品とも言いがたい物体がゴロゴロと積み重なっていた。
 ………料理?
「いいか叉紗?今度っから飯は俺が作るからお前はジッとしてろ」
「えぇ〜!?そんな遠慮しなくてもいいよぉ」
「いや、いいからジッとしてろ」
「気なんて遣わないでよ。貴則らしくないよぉ」
「頼むから、遣わせてください」
 俺の生死に関わるからな。
 そして1時間近くにまで及ぶ説得のおかげで、ようやく叉紗はキッチンから出て行った。なんでも、庭の草刈をしてくれるそうだ。これはありがたい。あれってメンドーだからなぁ。
 じゃ、俺は朝飯でも作って『ごくろうさん』の一言でもかけやりますかな。
 
 
 俺が学校の校門に着くと、不意に後ろから声が掛かった。
「お兄ちゃーん!!」
 その次に来るであろう行動を予測して、俺は真横に身体をずらす。
(ごいん)
「〜〜ッ!!!」
 そして背後から殴りかかってきたその人物は、校門に張り付いている『私立翡翠学園』というなんともご大層な名前を掲げた青銅の板を殴りつけた。
「美奈、避けられたと思った時点で行動を変えろ。そんなんじゃあ神瞳に一発も当てられないぞ」
「だからって黙って見てないで止めてよぉ!」
 目に涙を溜めながら、美奈は右拳を押さえている。
「知るか。さっさと保健室行ってこい。それとも一人で行けないとでも…ッ!」
 言葉の途中で、俺は美奈の左手を引っつかんでその場を飛びのいた。
 それと同時に、数本の氷柱が俺たちの足元に飛来する。
「これは…!」
 美奈が驚きの声をあげると同時に、殺気とも取れる気配が前方に生まれる。
「よう、並木に神崎」
「なにもこんな平日の朝っぱらから来なくても良いじゃないか、相澤。俺は勉学にいそしみたいんだが?」
 俺の言葉に、背中に庇った美奈の「嘘ばっかり…」という呟きが届くが、今は場合が場合だから無視した。
「まあそうつれなくするんじゃねえって。今回ばかりは、多少なりとも本気だからな」
「…なるほど。本気か」
 相澤の声にあわせるようにして、背後にも誰かの気配が生じる。このパターンは…
「一人ずつ、確実に狙う。それが王道でしょう?」
 当たっても嬉しくも何ともないが、案の定小林が鉄釘片手に立っている。
 美奈が能力に覚醒してくれたら何とかなりそうだが…それを望む訳にも行くまい。
「ちっ…クソッ!」
 俺は美奈を抱き上げ、前後から飛来した飛び道具を真横に飛んで避けた。そのまま、学園から離れるように走り出す。
「逃がすかよ!」
「追うわよ」
「追ってくるな!」
 そう叫んでから、俺は抱えたままの美奈に声をかける。
「美奈!この時間帯だったら神瞳は何処のあたりにいる?」
「えっ?…わ、分かんない。…家かな?」
「頼りにならないな、全く」
 美奈のあやふやな返答を頼りに、俺は走るスピードを上げる。
 美奈を抱いてなかったらもっと速く走れるが…置いて行く訳にもいかないからな。
 
 
「ふぅ〜……」
 朝食のトーストとスクランブルエッグを食べ終え、食後の温かいお茶を飲みながら、俺は幸せを噛み締めるように息を漏らす。
「ゴチソーさまぁ〜」
 叉紗もこんなメニューだが満足してくれたようで、幸せそうな顔をしながら俺の分の食器も一緒に流しに入れてくれた。うん、ヘタなのは料理だけみたいだな。これなら………
「あれ?」
 俺が考え事をしていると、何かに気づいた叉紗が素っ頓狂な声を出す。叉紗の方を見ると、壁に掛けてある時計を見ながら口をアングリ開けている。なんだ?時計のオプションで付いてるスズメでも食いたくなったのか?
「学校はどうしたの?」
「決まってんだろ?サボリだよ、サ・ボ・リ」
 さも当然といったカンジに応えると、叉紗は「ふ〜ん」と言って、再びイスに腰掛ける。それを見計らって、俺は今まで考えてた事を口にすることにした。
「なぁ、叉紗、アルバイトしろ」
「あるばいと?」
 俺の言葉に首を傾げる叉紗。そう言や、人間社会の詳しいことはまだ教えてなかったっけ。
「まー、簡単に言えば仕事だ。仕事。」
 うん、我ながらなんてシンプル・イズ・ベストな答えだ。
 いくら学校に行かないから学費はかからないにしろ、生活費というのは生き物ならばかかることは絶対なことだ。それが人型ならばなおのこと。俺の両親の遺産&保険金にだって底はあるし、バンドの活動費だってそれなりでしかないからな。
「………なんの仕事?」
「お前の能力を最大限に生かせる仕事だよ」
 しばらく黙って考えていた叉紗だったが、やがて下げていた顔を上げて、大きく頷いて見せた。そんな叉紗を見て、俺もニカッと笑って頷き返してやった。
 ここまで信用してくれる家族ってのも、良いもんだな。……ホント。
 ………チッ、らしくねぇ。
 
 身支度を簡単に済まして、俺達は家を後にした。
 少し街中を歩いて行くと、やがて昼間だと言うのに薄暗い雰囲気を振り撒く通りに差しかかる。ここをいつも歩き慣れている俺はまだしも、初めて歩く叉紗には少し抵抗があるらしく、俺の袖をギュッと掴みながら後ろを付いてくる。
 前は裏通りで狸寝入りしてたくせに………
 やがて俺の足が止まると、その目の前に決して大きいとは言えない診療所があった。叉紗はキョロキョロと心配そうに辺りを見回してから診療所をマジマジと見詰める。だが、普通の診療所とは少し異なるところがある。看板などがまったく無いことだ。よく見なければ、普通の一軒家と間違われてもしかたがないというくらいである。
「ここ?」
「ああ、俺が時々お世話になるモグリの医者が経営してる診療所…病院なんだ」
 簡単に叉紗に説明した後、俺は出入り口のドアをガチャリと遠慮無く開ける。その後に続いて、慌てて叉紗も診療所内に入る。
「誰だ……ああ、神瞳か」
 短く刈られた真紅の髪が印象的なここのドクター、『玖珂 雅斗(くが まさと)』がタバコを咥えながら奥の部屋から顔を出してきた。この様子じゃ、今は客がいないようだな。まっ、ここに来るのは大抵ヤっちゃんか正規の病院では診せることができないような怪我や病気の治療を受けるような客ばっかだから、人が居ないというのは、ここでは良いことなのだ。
「なんだ、お前怪我したのか?珍しいな」
 そう言いながら、ドクターは診療室へと入って行く。俺と叉紗もその後を付いて行った。そして診療室に入ると、ドクターが出してくれたもうひとつのイスと、患者が腰掛ける診療椅子に俺と叉紗がそれぞれ腰掛ける。
「おっ、なかなか萌えな彼女連れて来たじゃないか。もうヤったのか?」
「ンなんじゃねーよクソヤブ」
 含みのある笑みをしながら、ドクターは俺にもタバコを一本放ってくれた。口に咥えると、ドクターがライターから火を出して、俺の咥えているライターに火を点けてくれた。すると、苦い味が口一杯に広がる。
「キャスターのマイルド?」
「ビンゴ、さすがだな」
 ふぅー、と、ドクターは煙を吐きながら診察椅子の真正面に置いてあるイスに腰掛ける。
「で、だ。ホントの用件ってのはなんだ?まさかそのコが病気だとか言うんじゃないだろうな?」
 足を組み、頬杖を着きながらドクターは俺の目を真正面から見据えながら尋ねてくる。こいつはいつもそうだ。まるで人の心を覗き見るような目で相手を見てから会話に入る。たまに、それがものすごく嫌悪感を抱くが、そんな自分が嫌になる。いつから俺はこんな弱くなった? はっ、考えるのもばかばかしい。俺は考えを中断した。
「ん〜…まぁ、口で説明すんのもメンドーだからな。今からあるもん見せっからさ。驚くだろうけど、マジなことだからな」
 そう言って、俺は診察室の戸棚の引出しから一本のメスを取り出し、手の甲に小さな傷を作った。ドクターは少し驚いたような表情をしたが、黙ってことの成り行きを見ていてくれている。
 そして叉紗が俺の傷に手を当てる。すると、その手にオレンジ色の光が集まり、それが消える頃には俺の手の甲の傷は完全に消えて無くなっていた。前にも一回見たとはいえ、これには驚くしかない。
 ドクターの方も、これには驚いている。まぁ、当然と言えば当然のことなんだけどな。
「ひゅ〜♪すっげーな。こりゃヘタな医者なんかよりも全然役に立つぜ」
「…………」
「ん?何黙ってんだ?」
「いや、もっと驚くかと思ってさ」
「……ククク」
 何が面白いのか、ドクターは吸い終えたタバコを灰皿に押しつけて火を消しながら、愉快そうに笑う。何か隠してるな。
「実はな、俺も―――」
 ガッシャァーーーーーン!!!
 ガラスが割れる音と共に、数人の人間がそこから転がり込んできた。目が点になる俺達だったが、その飛び込んできた人物を見て、俺と叉紗が声を上げた。
「せ、センパイ!?」
「それに美奈ちゃん!?」
「へっ!?神瞳に叉紗ちゃん!」
「お、お前ら、なんでここに!?」
 その驚きの声に反応し、センパイ(と抱えられた並木)もこちらの存在に気づいて驚きの声を上げる。そして、その他の人物達も……
「し、神瞳!?」
「チッ!二人揃っちまったか!」
 なんと、あのザココンビ(小林&相沢コンビ)までもが驚きの顔を俺に向ける。
 何気に無視された叉紗は、診察室の片隅で暗い影を背負ってイジイジしてたりする。お〜い、ちょびっとは同情してやるから戻ってこ〜い。
 ――――――――ッ!
 途端に、背中に突き刺さるような殺気を覚え、振り返る。するとそこにはいつもしている死神の鎌のチョーカーを握り締め、顔を怒りに引き攣らせるドクターの姿があった。
「おいガキども、なんのつもりだ?」
「あ、あんたは!?」
 ドクターの姿を見て、相沢が何か大切なものを見つけたような声をあげる。奈津美もそんな表情をしていた。
「玖珂 雅斗先生だな。悪いが、一緒に来てもらいたい!」
 ピクッ
 相沢の言葉を聞き、眉間にシワがピクリを反応した。バカな奴だな。そんなの今言ったらもっと怒るに決まってんだろうに。
「言い残す言葉はそれだけか小僧?」
 ドクターそう言った途端、握り締めていたチョーカーに驚くべき変化が訪れた。
なんと、死神の鎌と鎖がまるでスライムのようにグニョグニョと変形し、別の形を形成した。その形は………
「拳銃……?」
「ああ、俺も特別な人間ってこった」
 ドクターが新しいタバコに火を点けながら俺の呟きに、律儀にも返してくれた。目線は『小林、相沢』コンビに向けられている。センパイにも向けられているけど……
「あのなドクター、悪いのは多分こいつらの方で、このセンパイの所為じゃないんだと思うぞ」
 一応、弁解しておく。が、
「知るかそんなこと!」
 嗚呼、聞く耳持ってないのね。殺戮ドクター………
「お、おい、どういうことだよ!?」
 パニくるセンパイ。俺もすべてを捨ててパニックになりたい気分なんだ。頼む、一人で理解して。オネガイ。
「クックック、俺のお仕置きは痛ェからな。覚悟しろや小僧ども」
 そのまま、無残にも人殺しの兵器が狙いを定め、まっすぐセンパイに…ってちょっと待った!
「お兄ちゃん!」
 並木の悲鳴のような声と、ドクターの銃が吼える音が重なった。ああ、センパイ。あんたの事は忘れないぜ。せめて1ミリ程度なら覚えておいてやるからな。
 
 
 俺は銃口を見据えながら、炎で銃弾を遮られるか考えていたが…どう考えても無理っぽいな。
 そう思って半分以上あきらめていたが…
(ドン)
 突如俺の前に現れた『何か』に阻まれて、銃弾が止まった。これは…土の壁、か?
「あ?何だコリャ?」
 その土壁の向こうから、先ほどの問答無用男の声が聞こえた。
「どう見たって土の塊じゃねーの?」
「そだね。土〜」
 とりあえず、緊張感の無い約二名の声は無視して…
 俺はほぼ無意識に、右隣りに位置している相澤や小林の方に目を向ける。こいつらがそんな能力を持っているのかと思ったが…その二人の視線は、俺に…と言うか、俺を通り越して左側に向けられていた。
 まさか…
「これ、お前か?」
 俺の左側にいる唯一の人物に聞くが…
「そう、みたいだね」
 本人も自信なさげにそんな答えが返ってきた。
「ちょっと、両手見せてみ?」
 美奈の左手の甲には、うっすらとだが『適格者』の烙印が…。
 俺は一つため息をついて、右手に炎の槍を生み出す。
 そのまま、未だに健在の土壁を両断し、その向こうに居た発砲男に槍を突きつけた。
「お前、何者だ?俺が必死に覚醒しないように守ってきた美奈を一発で覚醒させちまいやがって…刺客か?」
「何言ってやがんだよこのクソガキが。人様の住居に不法侵入してきた上に窓破壊しやがって…その上刺客呼ばわりだぁ?ふざけんなよ!」
 そのまま無造作に突き出された銃口が俺をかすめ…
「そこで逃げようとしてるお前らもだ。一体何なのか説明してみたらどうだ?」
 鼻先をかすめた弾丸に、小林と相澤が凍りついた。
「あ。お前らまだ居たの?」
 神瞳は本気で忘れていたらしく、そんな感想を言う。
「そう言えば、あたしたち追いかけられてたんだよね?」
「お前も忘れとったんかい、美奈!」
 ついキャラクターを忘れて突っ込んでしまう俺。もう何がなにやら。
「とりあえずさ、自己紹介したら?先生」
「…そうだな」
 叉紗の声に、先生と呼ばれた鉄砲男が再度銃をチョーカーに変えた。珍しい能力だな。
 
 
 とりあえず、俺たちは小林と相沢を手ごろな縄で柱に縛り付ける。その間、しっかりとセンパイの炎の槍が二人の眉間近くを行き来してたけど。
 その間に叉紗と並木は割れた窓ガラスの掃除、かたづけ。
 そして俺とセンパイがドクターに事の事情をなるべく分かりやすく説明する。もともと頭の考えが柔らかく、回転も速い人だったから、案外すんなりと事の事情を理解してくれたりする。
「ほぉー、じゃあそのバカコンビがお前らを捕まえようとしてるわけか」
「うぬ、実にメンドーなことになっとんのよ」
 俺はタバコに火を点けながら、目を線にしてメンドくさそうに応える。なんか、センパイの目線が痛いなぁ。
「でだ。こいつらはどうするんだ?」
 センパイが俺から目線をずらしてバカコンビの方を向きながら尋ねてくる。
「ん〜……俺はどーでもいいや。こいつらザコだしぃ〜?」
「なんですってぇ!?」
 俺の言葉にカチンときたのか、『高飛車の小林』が俺に突っかかってくる。今の状況が分かってんのかこいつは?
「アンタたちを生かして連れてきてっていう命令だから手加減しててあげてるのよ!殺せって命令だったらアンタたちなんか―――」
 ボン―――――ッ!!!
 小林のセリフの途中、まだ修理中の窓ガラスの隙間を縫って何かが診療室内に投げ込まれ、それが音と共に黒い煙を発生させた。不意打ちだったため、俺たちは誰も反応できずにまんまとその煙の中に巻き込まれてしまった。
『お二人とも、ここが引き際ですよ』
 黒い煙の中から、聞き覚えの無い声が響く。
「ゲホゲホ!…誰だコンチクショウ!」
 俺は煙を吸ってムセながらも、その見えない声の主に向かって叫ぶ。
『始めましてと挨拶したいところですが、今はまだそのときではありませんので、またお会いしましょう。今度からはこの二人には『殺せ』と命じておきますので、少しは楽しめることでしょう』
 その声はムナクソが悪くなるくらい嫌味な、笑みを含む声で告げると、そのまま気配を消した。すると、俺たちを包んでいた黒い煙も消え小林と相沢も姿を消していた。
「うわ、種も仕掛けもありまくりな手品だな」
「ンなわけねーだろ!あぁ〜、修理費ふんだくるのを先にすれば良かったぜ」
 イライラを発散でもするかのように――実際そうだろうけど――ドクターはタバコに火を点けて一気に吸い、タバコの3分の2を灰にする。実に健康に悪い吸い方だな。
「悪い美奈。俺がちゃんとしてなかったために」
「ううん。お兄ちゃんの所為じゃないよ。それに、お兄ちゃんを守れたんだから、あたし嬉しいよ」
「……すまない」
 センパイたちはセンパイたちで、なんとなく何処かのマンガやアニメ、ドラマや映画のワンシーンっぽいことをしていたりする。
「で、だ。ウチの猫娘は雇ってもらえんのか?時給1000円くらいで」
「おう、良いぞ。時々夜のお相手もプラスして欲しいくらいだ。そしたら時給はその5倍にしてやるぞ」
「25のオヤジが言うセリフじゃねーだろが!」
「なにぉぅ!?まだまだ盛り時だろ25は!?」
「黙れエロヤブ!」
「ヤブ言うな!」
「エロは良いのか!?」
「あうぅ〜、もう無茶苦茶だよぉ〜」
 ただ、叉紗だけがこの二つのグループから追い出され、独りで現実に残されていたりするのだった。
 
 
続く
 



あとがき
 
にいたか:どもぉ〜!にいたかです!
玖珂:ウイ〜ッス、愛称はドクターだ。ダリィなコンチクショウ。
にいたか:オヤジパワー炸裂だな、ドクター。
玖珂:オヤジ言うな!俺はまだ25のピッチピチなナイスダディだぞ!
にいたか:うわぁ〜い、ツッコミ所満載だよアンタ。
玖珂:おう、まあ任せとけ。
にいたか:アンタはそれで良いんかい!?
玖珂:さて、出演料よこせ。それで夜の街に繰り出すんだからよ。
にいたか:………で、でわ、デジデジさんどーぞ!ヽ(゜Д゜)ノ(逃避)
 
デジ:はい、どーもー。
神崎:とうとうやっちまったな、デジデジ。
デジ:え?…ああ、並木さんを能力に目覚めさせた事ですか?
並木:って言うか、あたしの能力。企画段階ではみ…
デジ:っだー!!言うんじゃねぇ〜!!初め水だったなんて黙ってりゃばれもしねえんだよ!
神崎:やっぱり、こいつはバカだな。
並木:どうしようもないくらいにね。
デジ:ううっ…虐めないで、お願い…
並木:まあ、ここでデジデジに愚痴ってても何にもならないし。
神崎:次回は初のデジデジからの書き出しだな。
デジ:ええ。予定ではとある二人組みの番外編っぽい感じになるかもしれません。
神崎:予定は未定。
デジ:うあ。何か今さらっと酷い事を…
美奈:気のせいだって。それでは、出来上がりをお待ちくださいませませ〜。
三人:さようならぁ〜。

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