ELIGHBLE BLOODS 第3話
【1st Stage】



 
 お互いに構えを取ったまま、俺と奈津美は膠着状態のまま、ただ時間だけがが過ぎていった。俺はこう見えても、結構修羅場通ってるから相手の構えを見れば分かる。こいつ……結構手強いな。
 唇が乾いたカンジがしたので、ペロリと舌で唇をなぞった。空気が殺気の所為でピリピリする。
「先手必勝!」
 先に動いたのは俺だった。上体を低くした状態をキープしながら、真っ直ぐ奈津美の懐目掛けて地面を蹴る。
 奈津美だって、そう簡単に間合いを取らせてはくれないだろう………そら来た。
 奈津美は、まだ俺が理解していない能力で、鉄の針を俺の眉間目掛けて放つ。確かに早いが、まだ余裕で避けられるスピードだ。それに、さっきこいつの話しからして、俺を生かしたまま気を失わせたいということには気づいている。こいつは俺を殺すことはしない。だから、さっき真っ直ぐにこいつの懐目掛けて突っ込めるきっかけがあったのだ。殺す気の無い攻撃は、多少肉体的な痛みさえ耐えられればカウンターを決められる確立が高い。
 俺は放たれた鉄の針を最小限の動きで避け、そのままスピードを殺さずに、奈津美までの距離があと2メートルという位置まで移動できた。奈津美の表情に焦りが見え始める。
 そして奈津美との距離が1メートルも無くなったとき、奈津美は焦ったのか、無防備な拳を俺に向かって放った。が、俺は奈津美の攻撃してきた方の腕の内側の関節を軽く殴ることでそれを避けると同時に、無防備な状態にさせた。
 無防備な奈津美の右脇腹に、俺の拳がめり込んだ。奈津美の顔が苦痛に歪む。が、なんと奈津美はそんな状態から渾身の膝蹴りを俺に向かって放った。
 攻撃後でバランスを崩しかけていた俺だが、なんとか空いていた方の腕でそれを受けることに成功した。が、今度は俺の背中に両手を固く握った拳が叩き込まれた。
 内臓に響くような痛みと、胃の中身が逆流しそうになる感覚が俺を襲う。
 そのまま倒れそうになるが、なんとか踏み止まって奈津美の顎目掛けてアッパーカットを繰り出す。奈津美は俺が倒れると確信していた所為か、避けられることなくそのまま顔を空に向けたまま地面から数センチほど体が浮いた。
 そして無防備になった腹部目掛けて、回転運動を加えた渾身の蹴りを放つ。奈津美はそのまま吹っ飛び、フェンスにしこたま背中を叩きつけた。奈津美のガクンと跳ねた口から、肺の中に溜めてあった空気が、一斉に吐き出される。
 よく見ると、奈津美が背中をぶつけた部分のフェンスが破れている。一応このフェンス、鉄で出来てたような気がしたんだけど………死んでないよな?
「くっ……なかなかやるわね」
 良かった、生きてる………いや、良くない!せめて気絶くらいしててくれよなぁ!
 奈津美は頭を振りながら、またまた懐からあの鉄の針を手に持つ。とりあえず、今のところ怖いのはあの針だ。あれを動かすカラクリさえ分かればいいんだけど……もしかして、『サイコキネシス』ってやつか?う〜ん…じゃ、あいつを直接ぶん殴るか、風で痛めつけるしかないのか………って、俺はまだ上手く使いこなせてないんだよなぁ。どーすっかなぁ……?
「そろそろ、決め技使わないとマズイわね。能力を完全に使いこなせる前に倒しておかないとね」
 うぬ、マズイ………どーしましょー?
「なかなか楽しかったけど、コレで終わりね」
 奈津美がそう言って両手を上げると、手に持っていた針すべてと、懐からもどんどんと針が出てきて、針先を俺の方に向けたまま宙を浮いていた。こ、今度こそシャレになんねぇーぞこれ!?
「安心して、死なない程度に痛めつけるだけだから……じゃあね」
 奈津美は勢いよく上げていた腕を俺の方に振り抜いた。すると、多くの針が俺に向かって一斉に飛んでくる。
 ああもう!どーにでもなりやがれチクショー!!
「はあぁっ!!」
 俺は必死になって腕に風を集められるだけ集めた。これくらいなら出来る。そして、それを思いっきり地面に叩きつけた!すると、
 ブォン―――……ッ!!
 俺の周りで、風が一気に舞い上がって、風の檻が出来た。それによって、奈津美の放った針は風の檻にぶつかり、地面に甲高い金属音と共に落ちた。
「あんた、出来るんだか出来ないんだかハッキリしなさいよね」
 必殺技を破られたからか、奈津美の顔は多少引き攣っていた。
「やかましい!ゲーマーだから助かったんだい!」
 俺も多少ヤケになって叫んだが、なんとなく分かってきた。『イメージ』だ。
 頭の中で強くイメージすれば、風はそのイメージ通りに形を形成してくれる。これならイケるぜ!
「刻み込め!『Slash Beat』」
 俺は手に風を集め、アンダースローをコンパクトに、出来るだけ小さな動作で行った。
 すると風はかまいたちとなり、地面から風の刃をはやして、奈津美に向かって一直線に飛んで行った。う〜ん、とりあえず言ってみたけど、まさかホントに出来るとはなぁ……
 なんとか避ける奈津美だったが、バランスを崩すには十分だった。すかさず俺は風を足に集め、駆け出した。風の推進力を利用した走りは、異常なほど速く、3メートルはあった奈津美との距離を一瞬で無くしてしまった。
 奈津美の驚愕の表情が目の前にきた途端、俺は奈津美が防御体制を取る前に、両手両足に風を集めた。そして………
「イかしてやるよ、『Cyclone Beat』ぉぉぉ!!」
 そして再び風の推進力を使って、奈津美の体に連撃を叩き込む。ほとんど常人の動体視力じゃ見ることの出来ない早さの拳や蹴りが奈津美を襲う。
 十数発ほど食らわした後で、最後の一撃のために風を利き腕の右腕に集める。そして………
「これで、ラストぉぉぉぉぉ!!!」
 ズドーーーンッッッ―――――……!!!
 奈津美の腹部に拳がめり込んだとき、その周りの風の動きが変化した。風は奈津美の周りで渦を巻き、竜巻を発生させた。
 横一直線に発生した竜巻は、奈津美を巻き込む。奈津美は、まるで糸が切れた凧のように激しく回転しながら階段室に直撃した。階段室の一部が粉々に砕け散り、舞い上がる。それを見てから、俺は深呼吸をひとつした。
 それから奈津美はどうなったのかを確認しようとしたとき、体の力が抜けてガクリと地面に膝を付いた。……足に力が入り難くなってる。呼吸も荒くなってるから多分、疲労だろうな。ダルイよぉ〜。
 なんとか歩いて奈津美の様子を見ると、白目を向いて倒れている。はぁ〜、ようやく気絶してくれたか。
 今の時間が気になりふと時計を目にしたとき、俺は苦笑した。時計の針が『午前1時』ちょっとになっていたのだ。太陽さんはちゃ〜んと斜めの位置にある。学校の建て方からして、ちゃんと東の方向にだ。なぁ〜る、こいつの能力は『磁力』だったのか。……ケッ。
 ネタが分かればたいしたこと無かったな。もうなんか聞き出すのメンドいからもういいや。階段室やフェンスの修理費を学校から請求されても困るし。
 早く教室に帰って授業の子守唄を聴きながらお昼寝タイムとしゃれこみ―――
(な、奈津美ぃぃ!)
 頭の中に声が響いた。もう何があっても驚かないって決めたつもりだったんだけど、さすがにコレには驚きだ。
(は、早くこっちに来てくれ!この野郎強い―――)
(奈津美だったらもうオネンネしてるぜ)
 とりあえず、返事してみる。
(なっ!?ま、まさかお前は神瞳なのか!?)
(イエス アイ アム!そしてフーアーユゥー?)
(く、くそがぁぁぁ!!)
 ………………………
 ………………………
 ………………………それっきり、毒電波は流れてこなかった。まぁ、奈津美の仲間だったら俺の敵でもあるんだしな。
 そう言えば、『こいつ強い』とか言ってたな。俺以外でもあいつらに襲われている奴がいるのか……逢ってみたいな。まっ、ほとんど確立無いだろうけど。
 そう考えながら、俺は階段を一段一段降りて行った。
 
 
 教室に戻って時計を眺めてみると、なんと3時間目後の休み時間に入っていた。なんか戦いに集中しすぎた所為でチャイムの音が耳に入らなかったみたいだな。よく他のやつに見つからなかったもんだな。まっ、いいとこだけどさ。
 つーことで、腹も減って来たことだし、並木の弁当でもいただきますかねぇ。
 そろそろと忍び足で並木の机まで移動する。……と言っても、並木の机は俺の席真ん前にある、窓際の後ろから2番目の席。俺が窓際の一番後ろだからな。
 幸い並木はその場周辺にはいなかった、俺をことをチクるやつもいないし、俺はいそいそと並木のカバンを霞め取った。机の影に隠れてコソコソとカバンの中を探る。………あったあった♪
 ここまで来れば後は俺の心のように繊細に、俺の行動のように大胆にぃ〜。そして確保ぉ〜♪
 そのまま弁当の蓋を取って、箸を使って弁当の中身を一気に口の中にかっ込む。ここはスピード勝負だ!
 がつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつ………ゴクン。
 はぁ〜、ごちそーさん。
「あああああ!!」
 弁当の中身をすべて食い終えた直後、俺の背後から鼓膜が破れるんじゃないかというほど大きな声が響く。俺はそのあまりの大音声に耳を塞ぐ。鼓膜が破れるかと思ったぞ。
 振り向くと案の定、並木は泣きそうな顔で俺に指を差したまま打ち震えていた。こいつ、親に人に指を差してはいけませんよって習わなかったのか?まっ、俺はそんなの関係無いけど。
「今日のから揚げ最高の出来だったのにぃ〜……」
 そんなことを呟いてから、並木の顔がどんどんと鬼のようになってくる。嗚呼、これぞ女のヒステリーってやつか。
「あっははー♪ご馳走さん。美味かったぞ。特にから揚げが微妙な辛味具合がもう……最高♪
 とりあえず、煽ってみる。すると並木の頭から『プチッ』という、変な音が聞こえてきた。なんか……いやぁ〜な予感する〜。
「神瞳ーーーっ!!!」
 なんと並木はそばにあった俺の席のイスを持ち上げて俺の方に向けた。なんちゅー馬鹿力だ。驚きモンだ。
「ダイエットに協力してやったんだ。ありがたく思え幼児体型
 会心の一撃。並木の精神に9999のダメージをあたえた。
「シャレにならない峠登ってらっしゃーい!!」
 ブォン―――――……!!
 俺に向かってマジでそのイスを投げつけてくるが、そんな攻撃は俺には効かないのだ。すぐさまそばにあったクラスメイトの机の上に飛び移って飛んできたイスを避けた。
「ノーコンだなぁ。そんなんじゃ俺にゃ勝てねぇぜ」
 さらに挑発。嗚呼、俺って根っからのからかい芸人やなぁ。
 それから少しの間俺と並木の攻防(攻の一方的だけど)はしばらく続いたが、4時間目の担当教師が入って来た途端に攻防は止み、そのまま何事も無かったかのように授業は始まった。
 
 
 キーンコーンカーンコーン………
 ようやく4時間目終了のチャイムが鳴った。それを合図に俺は突っ伏していた机から顔を上げる。すると目の前に自分のカバンを持った玲がいた。
「ほら、早くフケるぞ」
「あ?なんでよ?」
「忘れたのか?今日はライブの日だろうが。これから準備とリハだ。幸い、今日の午後の授業はLHR(ロングホールルーム)だけだからな」
「えぇ〜?いいじゃん今日は休もうぜ」
「あのな、チケット代はもうもらっているんだ。そんなわけにはいかないだろう」
「チッ、まっ、いっか」
 俺は机に掛けてあったカバンを手に取って玲と一緒に教室を出て行こうとしたときに、自分の右の手の甲に妙なアザが出来ていたことに気づいたが、特に目立ちそうもないので、気にもとめなかった。
 
 
『I don’t care about tomorrow……』
 ―――――……!!!
『I cant call you anymore』
 ―――――……!!!
 歌っているときは頭の中が真っ白になる。何も考えられなくなるけど、自然と歌詞が口から出てくる。俺や俺の周りを照らすライトですら無いように感じられる。ただ唯一感じられるのは客の歓声と自分の心臓の鼓動だけ。
 このとき、俺は自分という存在をハッキリと自覚出来る。
 そう、俺はちゃんと……ここにいる。
 
 
 ライブも無事に終わり、かたづけをして帰る頃には、周りは既に闇に包まれる時間になっていた。
「ちゃんと寄り道しないで帰れよな」
「あ?ガキか俺は?」
「この間バイクに乗ったまま東京まで泊りがけで遊びに行ってたじゃないか」
「う゛……」
 確かに、そんな記憶があったような無かったような……
「とにかく、じゃあな」
「おう、はよ帰れ帰れ」
 俺は玲の家までバイクで送り、そのままウチの近くにあるアーケードまで飛ばした。アーケードの入り口にバイクを止め、適当に散歩した後、近道に裏通りを通ることにした。
 相変わらず、夜でも明るい表通りとは正反対に、裏通りでは真っ暗な闇が辺りを支配していた。ここを通るたびになにかあるんだよなぁ。前回は不意打ち食らいそうになったんだよな…まぁ、まったくの雑魚だったから別になんとも無かったけど。それに、ここって近道だからなぁ。
「ん?」
 もうそろそろ出口の近くに差しかかったとき、妙な人だかりを見つけた。数人の柄の悪い奴らが、何かを囲んでいるのはすぐに分かった。俺は好奇心から、その人だかりに近づいて行く。
「おい、何してんだよ?」
「ああ?…って、神瞳さんじゃないですか」
「よっ、なんか良いモン見つけたのか?」
「ええ、ほら」
 俺が声をかけた奴は俺の知り合い……って言っても、ほとんど舎弟みたいなもんなんだけどさ。他の周りの連中もそうだった。真っ暗で気づかなかったぜ。
 とりあえず、俺は舎弟Aが指を差したものを見る。
 …………そして舎弟Aを見る。
「女……?」
 そいつは金髪の、大体俺よりも一つ二つ下ぐらいの少女だった。肩まである俺の髪よりも少し短いくらいのショートカットにしている金髪の色が深く、印象的だ。
「ええ、なんか可愛いコでしょ?」
「これからヤろうかなと思ってたとこなんスけど、神瞳さんもヤりますかね?」
 最初に声をかけたのと違う、舎弟Bがシンナーで欠けた歯を剥き出しにしながら、イってる目で俺を見てニヤリと普通の奴が見たら不気味がるだろう笑みを浮かべる。俺は舎弟Bから目線を動かし、再び少女の顔を見る。
 見たところ外傷も無く、呼吸音も一定なとこからして、ただ寝ているだけのようだ。だけど、なんでこんな物騒なトコで?まぁ、今はそんなことよりも……
「少女のレイプは犯罪価値デケェんだぞ。ここはやめとけ。死んだら目覚めもわりィから家が近い俺が手当てしとくからよ。あと、ライブ来てくれてありがとな」
「わかりました。ライブの方も、次回楽しみにしてますよ」
「ああ、じゃな」
 俺は何も知らずに平和に眠りこけている少女を背負って裏通りを抜けた。そして、バイクの俺の背中に縛りつけるように固定して、走らせた。
 
 
 そして綺麗に修復された愛しき我が家に着くと、俺は背中合わせで縛っていた縄を解いた。すると、
「お命ちょうだいー!」
 金髪の少女が俺に向かって隠し持っていたナイフを振り下ろしてきた。俺はそれを軽くサッと避けて少女の腹部に一発入れる。すると、それだけで少女は「ぐぅっ」という声にならない声を出して地面に突っ伏す。
 なんだ、この異常によわっちいガキは?刺客か?刺客のつもりなのか?
「うにゅ〜…よくもやったな。それにさすが適格者だ。ボクの演技を見破るなんて」
「そう言う、異常に弱いお前は何者だ?そして口を完全に閉じたまま寝る器用な奴はいないだろうが」
「ううぅ〜、ボクは弱くなんか無いやい!キミが強いんだよぉ」
 言い訳するのは、その両目尻にあふれんばかりに溜まっている涙をなんとかしてからしてもらいたいもんなんだけど。あまりに弱すぎて、弱い者イジメしてるみたいで気が引けるなぁ。
「まっ、そんなことはどーでもいいだよ。俺は、フーアーユゥー?って疑問形を使ってんだよ。これくらいの英語が分かんないわけじゃないだろ?ちゃんと答えろクソガキ」
「クソガキじゃない!叉紗(さしゃ)っていう、ちゃんとした名前があるんだもん!」
「変な名前だな。オイ」
「変って言うなぁ!」
 再びナイフを俺に向かって振り下ろそうとした叉紗だったが、振りかぶった途端に、俺の超人デコピンが叉紗のデコを直撃した。
「至近距離からそんな振りかぶるなよ。隙だらけだったぞ」
 あまりの痛みにデコを抑えて目尻に溜まっていた涙をさらに増やす叉紗。ウッ、これはこれはもしや……
「うううううぅぅ〜〜〜……」
 や、ヤバイ。充電中だ………
「うわぁ〜―――ムグ!?」
 大声で泣き叫ぼうとした瞬間、俺は急いで少女の口を両手で抑えた。ふぅ〜、もう少しで近所で『子供をイジメた高校生』になるとこだったぜ。
 ガブッ!
「痛ッ……!」
 こ、こいつ俺の手噛みやがった!
 噛まれた痛みというよりも、驚きの所為で、叉紗の口を抑えていた手を放してしまった。
「もう許さないんだから!本気出しちゃうもんね!」
 いや、俺としては呆気なさ過ぎるから初めに出して欲しかったんだけど……
「はあぁぁぁ………」
 気合の出ている声と共に、叉紗の周りの空気が少しずつだが張り詰め始める。こりゃ期待できるかもな……
 カッ―――――……!!!
 叉紗の体から一気に光が放出される。俺はライブのときにいつも掛けているサングラスを装着して目がくらむのを防ぐ。それと同時に、叉紗の体が変化したのがシルエットでだが、見えた。ようやく光が薄れ、サングラスを取っても平気になったので、俺はサングラスを外して叉紗の姿を見た。
 ……………………
 ……………………
 ……………………なんだそりゃ?
「さぁ〜『本気う゛ぁ〜じょん』になったからには、もうキミ死んじゃうよ」
 俺は目をゴシゴシと荒々しく擦ってから、もう一度叉紗を見る。……変わらない。
 少し腕を組んで考えた俺は、無防備に叉紗の腕を掴み、多少驚いている叉紗を街灯の真下、もっとも明るい場所に連れてから、その姿をジッと見つめる………やっぱり変わらない。
「な、なんだよぉ〜?」
 ハッキリ言おう、こいつ……猫耳と尻尾が生えただけだ!
 ある程度の人物には巨大な精神的ダメージを受けてしまうような姿だけど、俺にゃ効かんぞ。ナメてんのかこいつは?
「さぁ、いざ仁嬢に勝負ぅ!」
 またまた叉紗はナイフを俺に向かって振り上げる。行動パターンが変わってないし……しかも攻撃スピードもさっきと大差無し。
 とりあえず………
 ドンッ―――……!!
 腹に一発決めてみる。
「ぐはぁっ!」
 殴られた腹部を抑えて再びうずくまる叉紗。またまた一発で俺のK・O勝ち。こいつ弱すぎ!変化の意味無いし!
「く、くそぉ……お前強いな」
「いやだから、お前が弱いの」
「ボクは勝てない勝負はしないんだ。じゃ、次のターゲットは誰にしようかな?」
「無視すんな」
「う〜ん……じゃ、並木ってコにしよ!」
「だから聞け……って並木ぃぃぃ!?」
 思わずノリツッコミ寸前のところで、理性を全開にして自分を押し止める。い、今のは効いたぜ。
 しかし、そこでなんで並木の名前が出てくるんだ?謎だ。神秘だ。
 もしかして、並木も『適格者』なのか?う〜ん、そんな素振りは見せなかったけどなぁ。まぁ、俺ですらほとんど驚きリアクションしなかったからなぁ。
「というわけで、じゃーねー!」
 そう言うや否や、叉紗は猛ダッシュで並木の家の方角に向かって行った。しっかし、早い。さっきもあのスピードで襲われたら少しマジになってたかもしれないというほど。わかった。あいつは『天然系』っちゅーやつだ。現実では始めて見た。
 って、そんなこと言ってる場合じゃねー!
 俺は素早くバイクに飛び乗り、アクセルをふかす。そして叉紗の後を追ってバイクを走らせた。
 もし並木が料理が出来なくなるほどの怪我をしたとしたら、俺は…俺は………
 誰の弁当を盗み食いすればいいって言うんだ!?
 俺は必死に叉紗を追いかけた。そして、並木の家の近くで並木の姿を発見したときには、並木はもう叉紗に襲われる瞬間だった。
 マズイ!そう思ってアクセルを全開でふかして追いかけたが、もう間に合わないと思い、目を反らしそうになった。が、そのとき、並木の傍に俺よりもひとつかふたつ上ぐらいの男が現れ、叉紗の手から並木を助けた。その男の手に握られている物は、真っ赤に燃える炎の棒だったのだ。
 
 
これが、俺と神崎 龍司との出会いだった。
 
 
続く



あとがき
 
 
にいたか:さてさて、第3話のしゅーりょーですな。
神瞳:しっかし、バカの相手ってのは疲れんだよなぁ。
にいたか:じゃ、お前の相手してる俺も疲れるってことじゃん。否定しないけど。
神瞳:なんだとコラァ!?
にいたか:あー冗談。冗談だからその風納めてくれ。死んじゃうって。
神瞳:チッ、この辺で勘弁してやるとするか。
にいたか:ふぅ〜、とにかく、次回はデジデジさんの龍ちゃん(失礼)verの後ぐらいに本格的な合作になるかもしれません。
神瞳:まぁ、あくまで『予定』だからな。話の流れからして。
にいたか:でわ、そういうことで。
にいたか&神瞳:次回もよろしくー!

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