Ar tonelico 世界の終わりで詩い続ける少女

発売元:バンプレスト&ガスト/ハード:PS2/ジャンル:RPG/お勧め度:9


☆レビューを一部改訂・追補

<少年は少女を護り、少女は少年のために詩を奏でる>
 昨今のキャラクターを表に打ち出したRPGに埋もれずに、ひときわ輝くアルトネリコ。
 今回はこのゲームのレビューを試みようと思います。
 ジャンルに“娘調合RPG”と表記するなど、かなり斬新な感覚を受けるこの作品ですが、
 やりこみ要素や細かい懲り方など、長時間遊べる作品になっています。
 さすがはアトリエシリーズで有名な株式会社ガスト。
 キミよ、見た目で“短くて軽いRPG”と思う無かれ──です。

<詩は世界を救う>
 アルトネリコの世界は、これまでに二度破滅の危機を迎えた世界です。
 いわゆる第三期、その終焉とも言える時間から、主人公である『ライナー・バルセルト』の旅が始まります。
 
 基本は、シリアス一辺倒な物語を追って行く一本道なストーリー。しかし、
 随所にちりばめられたミニイベントと、世界観の一端を担う“レーヴァテイル”という存在により、他のRPGとは一線を隔した作品と綯っています。

<姫を護る騎士と、詩をつむぐ姫君>
 本戦闘システムでは、前衛三名とヒロイン一名の全四名にて行われます。
 行動順は画面上に示されたタイムゲージにて閲覧する事ができます。
 こう書くと、最近よくある横から見た戦闘なのですが……。
 ここで関わってくるのが、後衛たるヒロイン、レーヴァテイルという存在です。
 彼女たちは超強力な詩を紡げる代わりに、とてつもなく打たれ弱い存在です。
 それこそ、前衛が余裕で耐えられる攻撃を食らって戦闘不能になってしまうほどに…。
 そんな彼女らを護衛し、詩の完成を邪魔する敵キャラを阻止する役目が、前衛の三名となってきます。
 
 つまりは、レーヴァテイルとそれ以外の人たちの動き方は基本的に異なるシステムであるということです。
 
 これは、実際にアルトネリコをプレイしていただければすぐにお判りいただけると思います。
 一見難しそうなシステムですが、理解さえしてしまえば戦略性を生かす事もでき非常に戦いやすい戦闘方法だという事がお判り頂けることと思います。

<なんでも作れる?グラスメルク>
 この作品では、グラスメルクと呼ばれる調合技術が存在します。
 これは、レシピさえ判明すればそこから未知のアイテムを創り出せるというシステムで、
 回復アイテムから攻撃アイテム、武器に防具、果てはイベントアイテムですら作成してしまいます。
 普通にシナリオを進めるだけであればそれほど苦労しないこのグラスメルクですが、実はかなりのやりこみ要素を詰め込んだシステムとなっています。
 その理由が、アイテムに設定される品質、いわゆるランクです。
 
 このランクは、グラスメルク実行時に消費されるグラスノ結晶(いわば魔法の増幅器のような存在)によって左右されます。
 とは言え。その品物自体の能力値はそのランクによっては左右されず、ランクCでもランクSでも同じ能力。
 
 では、このランクを上げる事によって何が起こるか、と言うと…。
 物語中盤になると行える、アイテムの再結晶化を行った際の結果アイテムに差が出てくるのです。
 
 再結晶化、それは不要となったアイテムから新たなグラスノ結晶を作り出す技術。
 これを有効利用すれば、キャラクターの能力が飛躍的にアップしていきます。
 特にランクSのアイテムから得られるグラスノ結晶は、お店や敵からは入手できないようなレアなものまで存在していますからね。
 素材をかき集め、最高の一品を作り上げる。
 この作品の中で、やりこみ要素の一端を担っている事は間違いない内容となっています。

<世界を司る詩>
 この作品では、随所に詩が流れます。
 レーヴァテイルが紡いでいる詩という形で、全員で四名の歌い手さんが参加されていますから。
 その中でも、お一人。わたしが以前から個人的にすごく好きな方が参加されていまして。
 Kircheのボーカル、みとせのりこさんです。
 Kircheと言えば、ZABADAKを通して名を知る事となったアーティストで、アジア系民族音楽タイプの楽曲をいくつも歌ってらっしゃる方です。
 加えてみとせさんはソロでもいくつか活動をされていて、PSのゲーム“クロノクロス”のED“ラジカルドリーマー”や、
 植松信夫氏他10名によるアルバム“TEN PLANTS2 CHILDREN SONGS”にて“銀色のライカ”という歌を歌ってらっしゃいます。
 上記の二曲とも、ゼノギアスの音楽で有名な光田康典氏の作曲ですね。
 彼女の歌声は、アルトネリコの世界観にかなりしっくり来る響きを提供してくれています。

<ネタバレしない程度のキャラ紹介>
 ネタバレしてしまうとタイヘンな事になるので、各主要キャラごとに、一言二言で解説を入れてみようと思います。

01.ライナー・バルセルト
 本作品の主人公。プラティナの都市にて、エレミアの騎士として活躍していた。直情的で猪突猛進な性格。
02.シュレリア
 エレミアの騎士たちを纏め上げる女性。沈着冷静でありながら部下をいたわる面も持つ。ライナーの憧れの存在。
03.アヤタネ・ミチタカ
 ライナーと同期入隊のエレミアの騎士。けして激昂せず穏やかな態度を崩さない。シュレリアを第一として動いている節もある。
04.オリカ・ネストミール
 空港都市ネモにあるエル・エレミア教会所属のレーヴァテイル。自分の能力に自身が持てず、常にマイナス思考を優先させてしまう少女。
05.ミシャ・アルトセルク・リューン
 レーヴァテイルの中でもβ純血種と呼ばれる希少種族の一人。かなりの行動派で理論派。その知識量に助けられる事もあるだろう。
06.ジャック・ハミルトン
 出身・身の上ともに不明。美女をこよなく愛する、自称さすらいのガンナー。面倒くさがりな性格だが、常に何かを探しているようにも見える。
07.ラードルフ・シュナイゼン
 エル・エレミア教会にて総司を務める人物。実直を絵に描いたような存在で、常に民の事を考えて動く事を第一としている。
08.クルシェ・エレンディア
 グラスメルクのエンジニア。空飛艇専門で、それ以外には無頓着すぎるほど冷静。その冷静さからくるツッコミは、かなりシビアな面を突く事も。


 …でもネタバレなしって難しいですね(苦笑)

<プレイする上での不都合点など>
 先ず、一番気になるであろう事はローディング時間ではないでしょうか。
 昨今のゲームの中には、戦闘に突入するたびにかなり長時間のロードを伴うものすらありますからね。
 その点で行くと、アルトネリコは非常に優秀と言えるでしょう。
 ローディング自体は始終行ったりムービーの再生が僅かに遅れたりしてしまいますが、待ち時間という存在はかなり考慮された作りとなっています。
 一つの事象をロードする間に現行の画面を並行処理し、うまい具合にローディングによる待ち時間を打ち消していると言う感じですね。
 
 さてさて。このゲームには上記のようにグラスメルクという調合システムがあります。という事は、必然的にアイテム欄が大量のアイテムで埋め尽くされるという事に…。
 それなのにページ送り機能がマニュアルに掲載されていないと言う点が、個人的に一番の不満でした(現在は、“□ボタンと上下”でページ送り出来る事が判明しています)
 あと、残念ながら誤字が目立ちました。セリフ付きで流れる言葉のところは、声優さんの言葉で補えているとは言え……音と表現が微妙にずれていると気になりますね…。

<総合的な事柄について>
 マイナスとなる点はいくつか存在しますが、それを割り切ってしまえればかなり楽しめます。
 加えて、基礎のつくりがかなりしっかりしていますので、絵が好みであるという人にとってはかなり評価点が高くなるでしょう。
 初心者にも安心して進められるような配慮がいくつも設置されており、同時にやりこみ重視派な方々の要望にも応えられる様に作られた良作だと思います。
 つまりは、昨今まれに見る良作RPGと言い切ってしまいたい作品ですね。
 ただし。作品のウリの一つである精神世界での出来事は、人によってはかなり毛嫌いする人も出るかもしれないですね。
 個人的にはそうでもなかったのですが、心の中のどす黒い部分に直面した時の心境など、かなり直接的な表現もありますので…。

 総合評価は高いです。本当はお勧め度10にしてしまいたいくらい。
 なので、興味のある人は、どうぞ手にとってプレイしてくださいませ。

<最後に>
 主人公、ライナーはいつか刺されると思う、に一票ということで(苦笑)


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