<サモンナイト2外伝>番外編+α
〜マグナ君の大変な1日〜



 
(ああ…良い天気だ)
 その日も、俺は顔にかかる陽光を布団の中で受け止めていた。
 朝のひととき、平和なまどろみの時間。この瞬間が俺にとってはすさまじくいとおしい。
声1「おにいちゃん…おにいちゃん…」
  誰かが俺を揺さぶるが、俺はもうちょっとこの幸福をかみしめていたいんだ。
マグナ「うーん…後5分…」
  そう、せめてそれくらいの時間はゆっくりとさせて欲しい…
  そんな事を考えていると、誰かが扉を開いて入ってきた。
声2「マグナー、もう朝だよー」
  甲高い声は、ともするとこの平和を引き裂くことになりかねない。そう判断した俺は布団の中に頭を沈めた。陽光は届かないが、温まった布団の感覚が心地よく顔面を包み込んだ。
声1「ミニス…何しに来たの?」
声2=ミニス「何しにって…マグナを起こしに来たに決まってるじゃない」
声1=ハサハ「それ…ハサハのお仕事だよ」
ミニス「そんなの、いつ決まったのよ?私が起こしちゃいけないって言うの?」
ハサハ「そう。お兄ちゃんはハサハのものだから…」
  いや、別に誰のものでも無いから。そろそろ覚醒しかけた頭脳でそう突っ込んだが、布団から出るタイミングがつかめずにそのままで居た俺。
声3「マグナ、そろそろご飯だよー」
ミニス「あっユエル抜け駆けは駄目よ!」
ハサハ「…(こくん)」
  誰かが布団に手をかけたようだが、すぐに他の誰かに引きずられて遠ざかった。
声3=ユエル「あーん何するんだよミニス!せっかくユエルが起こしてあげようと思ったのに」
ミニス「それを抜け駆けって言うの!マグナは私に起こしてもらうのを待ってるんだから!」
ユエル「違うよ!マグナを起こすのはユエルなんだから!」
ハサハ「違うよ…ハサハなの…」
声4「そうじゃなくってもしかしたらアタシかもしんないよ?」
ミニス「ア、アカネ!どうしてここに居るのよ!?」
声4=アカネ「えーだって…何だか楽しそうだったしー。マグナ君を起こそう大会でしょ?」
ユエル「そんな大会無いよ!もしあってもユエルの優勝なんだから!」
ミニス「何を勝手なこと言ってるのよ?私に決まってるでしょ?」
ハサハ「…っていうかお前ら全員出てけ」
  おいおいおいおい。何だかえらい騒ぎになってきてないか?そんな事を考えつつも、俺はまたまどろみにとらわれて眠りにつこうとしていた。
  それからしばらくして。
声5「マグナさーん。そろそろ起きてくださいよ」
  自分の耳元で聞こえたささやき声に、俺は半覚醒状態まで舞い戻ってくる。
マグナ「んぁ…?」
声5「早く起きないと、私がキスしちゃいますよー?」
  その声は何かを楽しんでいるようにそう言った。…え?何をしちゃうって?
  考えている間にゆっくりと陽光が入り込み(誰かが布団をめくったのだろう)、俺の頬に誰かの息がかかる。
  …きす…きす……キス!?
マグナ「なぁぁぁっ!」
  俺は慌てて上半身を起こし、5人目の人物に目を向けた。
声5「ああ、マグナさんおはようございますー」
マグナ「…おはよう、パッフェルさん」
  俺は頭を抱えたくなる衝動を押さえ、ベッドから下りた。
  ふと周囲を見渡すと、部屋の隅にハサハ、ミニス、ユエルの3者が気を失って倒れている。
  アカネの姿が見えないけど、どうせ何かされる前に逃げたんだろう。
マグナ「パッフェルさん、彼女たちに何をしたの?」
  確実にそれをしたであろう人物に目線を向けると、
パッフェル「いやー、私のマグナさんに朝駈けしようとしていたお子様たちが居たから、こう背後に回って首筋にトストス…っと。えへへ」
  パッフェルさんは小さく舌を出してそう言った。
マグナ「はぁ…ま、彼女達なら大丈夫だろうけど…食事でしょ?行きましょうかパッフェルさん」
パッフェル「あ、ちょっと待ってくださいよー」
  そのまま部屋を出ていこうとした俺を、パッフェルさんがつかんで引き止めた。
マグナ「何ですかパッフェルさ…!」
  振りかえった俺の顔の前に、パッフェルさんの顔のアップがあって…
パッフェル「ふふ。今朝し損ねた分ですよ?」
  俺の唇からスッと離れ、パッフェルさんは微笑んで見せた。
パッフェル「それじゃ、食堂でお待ちしていますね」
  そのまま部屋をあとにするパッフェルさんをぼうっとした頭で見送って…俺は背後から来る殺気に振りかえった。
ミニス「…ちょっとマグナ。今のは何よ!」
ユエル「ひどーい。ユエルキスなんてしたことないのにー!!」
ハサハ「…おにいちゃん……死ぬ?」
マグナ「ちょ、ちょっと待ってくれよ3人とも。どうしてそんなに殺気立ってるんだよ?特にハサハ、腰から刀を抜くな!」
ミニス「問答無用!来て、シルヴァーナ!」
ユエル「マグナの馬鹿―っ!」
ハサハ「…マジで地獄見るか?」
マグナ「ほ、本当にちょっと待っ…ぎゃぁぁぁぁぁ……」
  3人の本気の攻撃を食らって沈み行く意識の中、どうしても気になることがあった。
マグナ(ハサハ…次に俺が復活するまでにキャラクター直しておいてくれよ。頼むからさ)
 
 
 
マグナ「ッ!?」
  次に俺が目を覚ましたのは、先ほどとは違う部屋、しかも既に日が傾きかけている頃だった。…って、ここは…えっと、カシスの部屋、か。
  あ、そう言えば朝はゴタゴタしてて言い忘れていた気がするんだけど、今俺達はアメル復活祝い(注:エンディング後)と称してフラットに遊びに来ていたんだ。
  以前来たときには出会えなかった面々も帰ってきていて、昨日は(フォルテ、エドスの2人を中心にして)ドンチャン騒ぎになっていたことが記憶に鮮明に残っている。
  そんな事を考えていると、部屋の扉を開けてカシスが入ってきた。
カシス「あ、起きたわね色男♪」
マグナ「何なんだよ、その色男って」
  少し不機嫌な俺(朝っぱらから仲間にボコられたら誰でも不機嫌になるだろ?)が聞くが、カシスは平然と返してきた。
カシス「ミニスにハサハ、ユエル、アメル、パッフェル、アカネ…は関係無いかな?まあそこら辺りの人気を独占してるんだから。まるでハヤトみたいね。そう思わない?」
マグナ「・・・・・・」
  そこで俺に意見を求められても…
マグナ「少なくとも、ハヤトよりは人気は薄いと思うよ。彼だって、君やリプレ、モナティを中心にして色んな人に大人気じゃないか」
  なんとかそう答えると、カシスは微妙に苦笑を浮かべた表情をした…ような気がしたけど、すぐにいつもの笑顔に戻った。
カシス「さて、今食堂にリプレがいるから何か食べさせてもらったら?キミは朝から何も食べてないんだしね」
マグナ「あ…うん、分かった」
  カシスにさっきの苦笑の意味を聞きたい気はしたが、何故だか『聞くな』といわれているようでおとなしく部屋を出ることにした。
 
 
 
  そして、食堂。
リプレ「あ、マグナ起きたわね」
アメル「マグナ、もう大丈夫ですか?」
マグナ「ああ、この通り全然大丈夫だよ。皆にも心配かけたみたいでごめんな」
  台所から顔を出すリプレとアメルに笑顔を返して、俺はそちらに向かうことにした。
マグナ「ところで…朝から何も食べてないから何か食べられる物無いかな?」
リプレ「えっとね…今作れるのはサカナネコのフライとか、サカナネコの姿焼きとか、サカナネコのムニエルとか…」
  おいおいおい。サカナネコだけかよ!
アメル「あたしのレパートリーは…おいもさんのスープとか、おいもさんのパンとか、おいもさんのフライとか…」
  こっちは、案の定いもだらけだし…
マグナ「あっ、そ、そうだ。俺ちょっと用事を思い出したから出てくるよ」
リプレ「あれ?サカナネコ食べないの?」
アメル「おいもさんは?」
マグナ「ご、ごめん。また今度食べさせてもらうよ。それじゃ!」
  何だか恨めしい視線を背中に感じつつ、俺はフラットから出て繁華街に向かった。
 
  そして、ここは「告発の剣」亭。以前、レイドさんにここのお店のペルゴさんが作る料理が絶品だと聞いていたから来てみた。…んだけど…
マグナ「ええっ!ペルゴさんが腹痛で寝込んでる!?」
セシル「そうなのよ。どうやら昨日食べたフグの毒に当たってしまったみたいね」
マグナ「それじゃあ、料理は…」
  これは食べられないかな、と思いつつ聞いてみたところ、セシルさんと名乗った女性は微笑んで答えてくれた。
セシル「ペルゴほどじゃないけど、私も料理できるけど…それで良かったら」
マグナ「へぇ…どんなのが出来ます?」
セシル「闇鍋。」
マグナ「ごめんなさいまた今度来ます」
  俺は素直に「告発の剣」亭を立ち去ることにした。
 
 
 
シオン「それで結局、私の所ですか」
マグナ「そうなんです。お蕎麦、作ってくれませんか?」
シオン「そうですね…」
  最後の望みとして訪れた薬処あかなべの店先で出会ったシオンさんに頼んでみたところ、彼は少し迷ってから、店の奥に向かって声をかけた。
シオン「アカネさん。少し出てきますからその間の店番を頼みますね」
アカネ「了解です、お師匠!」
  奥から飛び出してきたアカネはシオンさんに最敬礼をして、微動だにせず見送っている。
マグナ「…シオンさん。アカネ、また何かやらかしたんですか?」
シオン「さあ、どうでしょうね」
  好奇心から聞いてみたけど、シオンさんは微笑んだだけで教えてはくれなかった。
  …後からアカネに聞いてみるか。
シオン「ところで、マグナさん。私こちらには屋台を持ってきていないので、基本的に蕎麦は打たないことにしているんです」
マグナ「えっ!?じゃあ、今からつれて行ってくれる所は何処なんですか?」
シオン「着けば分かりますよ」
  うーん…相手がシオンさんじゃなくて、こちらから頼む状況じゃなったら問答無用で逃げ出したく感じるのは俺の気のせいであって欲しいんだけど…
 
 
 
  シオンさんが連れてきた先。そこは最近サイジェントにオープンしたお花屋さんだった。
パッフェル「はぁ。それで私に料理を作れと?」
シオン「ええそうです。以前臨時手伝いとして入っていただいた時に料理を作ってくれましたよね。今度は、マグナ君に作ってあげる訳には行きませんかね?」
パッフェル「うーん…でも私、今お仕事中ですし…」
マグナ「そ、そうだよな。パッフェルさんの邪魔しちゃ悪いよ、シオンさん」
  パッフェルさんの料理…彼女には悪いけど、とてもマトモなものが出てくるとは思えないってのも大いにあり得ると思って俺が止めようとしたが、
パッフェル「分かりました。マグナさんから『この人は料理できないだろ』的なオーラを感じ取りましたので、私のプライドのためにも作らせていただきます!」
  どうやら顔に出てしまっていたらしい。パッフェルさんは張りきって店の奥に引き返していった。
パッフェル「店長〜。知り合いが来ているので少しの間台所をお借りして良いですか?」
店長「ああ、いいよ。ついでに、僕にも何か作ってくれないかな?」
パッフェル「了解ですー」
  パッフェルさんの声に続いて、なにやら野菜を刻む音が聞こえたり、何かを焼く音が聞こえたりしだした。…やっぱり、まだちょっと不安だ。
シオン「マグナさん、そう不安そうな顔をしなくても大丈夫です。彼女の腕は私が保証しますから」
マグナ「あ、はい」
  まあ、シオンさんのお墨付きなら美味しいんだろうけど、とりあえずお腹が空いてるから急いで欲し…
パッフェル「できましたよー食堂までどうぞー」
マグナ「早っ!」
店長「相変わらず手際いいねぇ、パッフェル。お嫁さんにもらいたいくらいだよ」
パッフェル「やですよー店長ったら。おだてても品数は増えませんからね?」
店長「うーんそれは残念だな」
  そんな会話をしている店長とパッフェルさんの後を、俺は黙ってついていった。
 
 
 
  そして、その花屋から俺が出てきたのは花屋が閉店してからのことだった。
マグナ「いや、パッフェルさんには悪いけど本当に驚いたよ。あそこまで料理が上手だなんて」
パッフェル「まあ、これでも一人暮らしが長かったですからね、私も」
  結局。パッフェルさん作の家庭的な食事をご馳走になった後、料理のお礼に今まで花屋の臨時アルバイトをこなしていたのだ。
  シオンさんは俺達が食べ終わった直後に『アカネさんの様子が気になりますので、これで』と言ってあかなべに帰っていってしまったけれど。
パッフェル「ですけど、今日はバイトのお手伝いまでして頂いて、ありがとうございます」
マグナ「そんな。あれくらい軽いよ。あのビーフシチュー、もう最高でしたから」
パッフェル「そ、そうですか?…ええ、気に入ってもらえて嬉しいです、私も」
  他愛も無い言葉を交わしていると、やがてフラットの建物が見えてきた。
  それと同時に、入り口から数人の人物が飛び出してきた。
ミニス「マグナ、お帰りー」
ユエル「パッフェルもお帰り」
ハサハ「…お帰り(にこり)」
マグナ「やあ、ミニス、ユエル、ハサハ。ただいま」
パッフェル「ただいまですねー」
  彼女達3人は、俺とパッフェルさんの声を聞く前に既に次の話に入ってしまった。
ユエル「ねえマグナ、今から広場でちょっとしたお祭りがあるらしいよ」
ミニス「リプレママには保護者同伴なら行ってもいいって言われてるから、マグナも一緒に行こう?」
ハサハ「…行こう?」
マグナ「あー…えと、それじゃあパッフェルさんも…」
  パッフェルさんも誘おうとしたが、その前に彼女は顔の前で両手を振って見せた。
パッフェル「あ、私は遠慮しておきますね。どうも、お祭りは少し苦手でして…」
マグナ「あ、そうなんだ。じゃあ、無理には誘えないね」
  俺の袖に掴まったままさっさと引っ張って行こうとする3人を何とか引き止め、俺は背後に位置するパッフェルさんを何とか振りかえった。
マグナ「それじゃあ、リプレやアメルにお祭りに行ってくるって伝えておいてもらえますか?」
パッフェル「ええ、分かりました。マグナさん、また今度、二人だけで行きましょうね」
マグナ「あ……うん。必ず。それじゃ」
パッフェル「行ってらっしゃいませー」
  ハサハ達に引きずられながら、後ろで手を振っているパッフェルさんを少し振りかえりながら。
  サイジェントでのお祭りが始まる…。
 
――The end…?――
 
<あとがき>
作者:はい、と言うことでデジデジがお送りしたGGGさんことインフェリアーさんによるサモナイキリリク第…3弾、ですね。いかがでしたでしょうか。
マグナ:今回は、俺が女性陣に囲まれて苦労するお話、って事だったんだけど…
パッフェル:あまり、普段の生活と変わりありませんよね?
マグナ:うん。そんなイメージも受けるんだ。
作者:それは、マグナ君が常日頃から非日常的な出来事の中に暮らしているからじゃないでしょうかね?
マグナ:う…反論できない(汗)
パッフェル:それにしても、今回はどうして私がこんなにも出てくるのでしょう?
作者:それは…一応、普通はあまり言い寄ってこない人のほうが恋人候補になりやすいのではないかという考察からですね。
マグナ:そうなのか。俺はてっきりパッフェルさんを個人的に好きだったから、ってだけで選んだんだと思っていたよ。
作者:失礼な。候補としては『ナツミ、クラレット、アカネ、ミモザ、ケイナ、ルウ、パッフェル、イオス』まで絞り込んで、そこから一番意外じゃなさそうで意外な人に登場を…
マグナ:こらこらこらこら。作者、相方候補の最後のは男だろ?
作者:え?でも、戦闘のときなんかは良く二人で一緒に行動してません?
マグナ:それは…まあ、戦友ではあるよな、イオスは。でもイオスはルヴァイド一途…
イオス:変な噂を流すな!
作者:お、イオスさんこんにちは。
パッフェル:こんにちは、イオスさん。
イオス:こんにちは、じゃない。僕はあくまでも男だし、好きな女性の1人くらいは居るさ。
マグナ:…それ、初耳だぞ?
パッフェル:あ、私知ってますよ。でも、この際は秘密、と言うことで。
作者:そうですね。あれは伏せておいた方が良いでしょうね。
マグナ:?????????
パッフェル:それでは皆様。
3人で:さようならー。


マグナ:何だか疑問が残るのは俺がおかしいからなのかなぁ?

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