<壮絶なる戦い…?>

 ここは悠久学園・高等部校舎。その一室に、二人の学生が居た。
「ねぇーリッド、寝てるんならマリアの魔法実験に付き合ってよぉー!」
「あのなあマリア。いくらお前の頼みでも、あんな危険なことに付き合えるわけねえだろ?」
「そんな事無いもん。マリア、失敗しないもん!」
(どこから沸いて来るんだよ、その自信…)
 そう思ったリッドだったが、相手がマリアでは毒舌を吐く気にはなれない。
「マリア。頼むからゆっくり寝かせてくれよ。今日は徹夜開けで眠いんだから」
「うー……」
 納得はしていないようだったが一応静かになってくれたマリアに感謝しつつリッドが夢の世界に入ろうとしていた矢先、
 (ガラガラ)
「おっはよー、リッド、マリア」
「あ、おはよレナ」
「…よぉ」
 教室に入ってきたレナの姿を見て、リッドはあからさまに不機嫌な挨拶を返した。
「あら?どうしたのリッド。やけに不機嫌ね」
「徹夜開けで眠いんだよ、バカ」
 突き放すように言ったリッドだったが、慣れているのかレナは気にも止めない。
「あっそ。ところでリッド。今から…」
「取材なら付き合わねーぞ」
 言葉を遮られたレナは一瞬全身の動きを止めたが、すぐに言い返してきた。
「どうしてよ?別に減るもんじゃないでしょうが」
「減るだろ?睡眠時間」
 面倒臭くなってリッドは机に突っ伏したが、そんな彼の襟首をレナが掴んだ。
「まあまあ、硬い事言わずに手伝ってよ。ね?」
「っておい!ちょっと待て!引っ張るな!」
 必死に机にしがみつくリッド。そのまま机ごと連れ去られるかと思ったが、レナの前にマリアが立ちはだかった。
「ちょっと待ってよレナ。リッドは今からマリアの手伝いをしてくれるって言ってたんだよ。勝手に入ってきて連れて行かないでよ!」
「そうなの?リッド」
「いや…止めてくれるのはありがたいが、誰もマリアの魔法実験に付き合うとは言ってねえぞ」
 レナに聞かれて思わず正直に答えてしまったリッド。
「ほーら御覧なさい。リッドは今から私の取材に付き合ってくれるって言ってるじゃない」
「だからそれも言ってねー!!」
 絶叫しながら、リッドはレナの腕を振り解いた。
「いいか!この際はっきり言っておく。マリアの魔法実験も、レナの強引取材も、どっちも命を落とすきっかけとなりかねない。だから、俺はそんなもんには付き合えねえ!!」
 しかし、当の二人はリッドの宣言も耳に入っていない様子だった。
「前から言おうと思ってたんだけど、どうしてリッドの事そんなに振り回すのよ。リッドは私の物なんだから!」
「いや、物じゃねえぞ。少なくとも」
「いーじゃない連れまわしたって!リッドは新聞部員なんだから部長の命令には従うべきなのよ!」
「俺が新聞部に入ったのはお前が無理矢理入れたんだろうが」
 それぞれの声に突っ込むリッドだったが、案の定届いてはいないようだ。
「何よ!」「やる気?」
 既にケンカ腰となってにらみ合っている二人に、
「…ケンカはダメだよ」
 唐突に声がかけられた。
「おわっ!」「わっ」「きゃ!」
 その声に、三人は同時に飛びのいた。その声の主は……
「さ、更紗!いつの間に来たんだよ!」
「ついさっき」
 気配すらも感じなかった事に多少おののいたリッドだが、更紗は平然と返してきた。
「とにかく、ケンカはダメだよ。週番として見逃せないもの」
 下から見上げながら左手の腕章を指差す更紗に、マリアもレナも一瞬顔を見合わせてしまった。
「そんな事言われても…」
「…ねえ」
 納得していない様子の二人を見て、更紗が右手を上げて言う。
「じゃあ、こうしよう。リッドを賭けて勝負するの」
『勝負?』
 二人の声がそろった時、また別の声が混じる。
「勝負か。景品はリッドってか?おもろそうやな」
 教室に入ってきたフォシルの手には、なぜかロープが握られている。
「勝負形式は任しとき。ちょうどええもんがあるからな」
「ってフォシル!なんで俺を縛ってるんだよ!」
「まあまあ。景品が逃げたら一大事やろ?」
「てっ、てめぇ…!」
 あっという間にリッドを縛り上げ、フォシルは軽々と彼を担ぐ。
「ほな、勝負は校庭でな。まっとるから」
 それだけ言い残して教室を去るフォシルを、マリアとレナは少し展開についていけないといった表情で見つめていた。
 しかし、
「……リッド、他の人に取られちゃうかもしれないよ?」
 教室を出ようとした更紗の言葉に、何とか動きを再開する。
「それは…ちょっと困るね」
「それもそうよね」


 校庭に作られた朝礼台の上にマイクを持って立ち、フォシルが声高に宣言する。
『輝け!第一回 リッド・ランフォード争奪戦!!』
 (わあああああっ)
 なぜか大勢集まっている観衆の前で、レナ達は顔を引きつらせていた。
「ど、どうしてこんなに人が集まってるのよ…」
「……私が集めたんだよ」
 マリアのつぶやきに、横にいた更紗が答える。
「さっすが更紗ね。一声かけただけでこんなに集まるんですもの」
「さらに何故にどうして由羅さんまでいるの?」
「リッド君争奪戦なら私も参加しないと。ね」
 頭の上に多大なハテナマークを乗っけたままのレナの声に、由羅がウインクで返す。
『さあ、とうとう始まりましたこの戦い!まずは選手紹介から行きましょう!』
 フォシルがそう言うと、この試合の選手を一人一人紹介していく。
『まずは一人目!誰もが認めるリッドの彼女。学園で一二を争う問題児、マリア・ショート!!』
 (わあああああっ)
「や、やっほー」
 顔を引きつらせて手を振るマリアを無視して、フォシルが続ける。
『続いて二人目!いつの間にか作られた謎の部活、新聞部の頭領兼リッドを下部として扱っている、レナ・ルーベック!!』
 (わあああああっ)
「ま、やるからには全力で行くわよ」
『三人目は、いつも誰かを追いまわして迷惑を振りまいている永遠の二十歳、橘由羅!!』
 (わあああああっ)
「いえーい」
『そして四人目!学園の風紀を賭けて戦うみんなの週番番長、更紗!!』
「は?」「更紗?」
 マリアとレナがそちらを向くと、更紗が小さく腕を振っていた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。どうして更紗が参加するのよ?」
「…のり?」
「のりって…更紗、キャラ変わってない?」
 汗を浮かべているレナをまたも無視して、フォシルが声を続ける。
『さて。今回の景品の紹介です!』
 いつの間にか、フォシルの背後には大きな物体が出現しており、そこには薄い布がかぶされている。
 その布を思い切り引っ張りながら、フォシルが叫ぶ。
『リッド・ランフォード!!』
 (わあああああっ)
「ちくしょー!いい加減放しやがれぇぇ〜!!」
 そこには、十字架に貼り付け状態のリッドがいた。
『さて。今回の試合形式をご紹介いたしましょう』
「フォシル。これが終わったら覚えとけよ」
 低い声でそうつぶやくリッドを無視して、フォシルが続ける。
『今回は三回戦までで争われます。ややこしいことはおいといて、とにかくそういうこっちゃ。ほな行くで!第一回戦!』
 フォシルの声で、マリアたち四人の前にミニテーブルと紙、鉛筆が用意される。
 因みに、雑用係は保健室でフォシルが捕まえてきたディアーナとアレフである。
『この紙に、リッドに関して知っている限りのことを単語で書いてもらいます。それをリッドに見せて、幾つ合っているかでポイントとさせていただきます!』
「つまり、リッドの事をどれくらい知ってるか、って事ね?」
『その通りです。制限時間は3分。レディー・ゴー!!』

『終了ー』
 フォシルの声で、四人から用紙が集められる。
『さあ、リッドに見てもらいましょうか』
 その紙をリッドのところに持っていくフォシル。
「ったく…かぞえりゃいいんだな?」
 なんだかんだ言って、数えてやるリッドもリッドだと思うが。
 数分後。
『第一回戦、結果発表です』
 (わあああああっ)
『マリア、23点。レナ、28点。由羅、15点。更紗、34点!』
「ってちょっと待てぇー!」
『?…なにか?』
 訊ねるフォシルに、レナが突っかかる。
「どうして更紗がそんなに知ってるのよ!」
『さあ?なんでや更紗』
 訊ねられた更紗は、少し考えた様子を見せてから返した。
「んー、常識かな?」
「どんな常識よそれ」

『さて。第二回戦は言葉合戦です!』
「言葉合戦?なにそれ」
「さあ?」
 顔を見合わせる二人のため、と言うことではないのだろうが、フォシルが解説に入る。
『これは、各自リッドにメッセージをかけていただいて、それにリッドが点数をつける形式です!因みに、点数の低い順で行きたいと思います』
「って事は、私からね」
『せやな。由羅、行ってみよー!』
 フォシルの声で、由羅がリッドの前に立つ。
「リッド君。後で思いっきり尻尾フサフサしてあげるね」
「…26点」
「うわ、ひっくーい」
『はいはい。時間が押しているので巻いていきましょう。続いてマリア!』
「えっ?マ、マリア?」
 少しうろたえた様子を見せたマリアだったが、意を決したようにリッドの前に進み出る。
「リッド。あの…そ、その…マリア、リッドの事大好きだよ」
「99点!」
「やったー!」
『さーて。お次はレナ!』
「うーん…私かぁ」
 なにやら考え込んでいたレナだったが、いい案を思いついたのかリッドの前に走ってきた。
「ねえ、リッド。これからはそんなに取材協力を強要しないから」
「それが普通なんだよ。…おまけで79点」
「何なのよおまけって!」
『さあ。真打登場か?マリアの大好きコールに勝てるのか?更紗!』
 静かにリッドの前に歩いて行った更紗は、笑顔を浮かべながら言った。
「リッド。高得点くれたらミッシュの紅茶1年タダ券をあげる」
「もらった!100点!!」
「ありがと」

『さて。二回戦まで終了して、点数は…
 4位、41点で由羅。3位、107点でレナ。2位、122点でマリア。そして1位、134点で更紗!
 それでは、最終戦の準備にかかりましょう!』
 (わあああああっ)

 数十分後。校庭に四つの玉入れのかごが用意される。
 周囲には、全部で四色の玉がばら撒かれている。
『最終戦は、ご覧の通り玉入れです』
 先程までアレフ達と一緒に玉をばら撒いていたフォシルが急いで朝礼台に帰ってきた。
『赤い玉がマイナス5点、青い玉が5点、黄色い玉が10点、白い玉が15点となっております。
 各自、制限時間5分以内に指定された場所に玉をいれて、その得点数できそいます。
 因みに、赤玉は相手のかごに入れてくださいね。
 間違っても、自爆しないように。自分が損するだけやで』
 フォシルの説明で、4人が各ポールの下で準備を終える。
『それでは、レッツ・ゴー!』
 そして、壮絶なバトルが幕を開けた。
「あーっ!ちょっとレナ、人のところにばっかり赤玉入れないでよ!」
「まあまあ。細かい事言わないの」
「あ!また入れた。こうなったら…」
「あ、ちょっとマリア!そんなに一度に投げないでって!」
「ちょっとマリアちゃん!流れ玉がこっちに入ってくるんだけど」
「って由羅!アンタも人のところに入れないで!」
 三人がそんな争いを続けている最中、
「…白い玉、見っけ。えい」
 なぜか、更紗だけが赤玉以外を集めていた。

『終了ー』
 フォシルの声で、飛び交っていた玉が止んでいく。
『さあ。点数の計測に入りましょう!』
 玉を数えるために走るディアーナとアレフを追って、フォシルも朝礼台を下りた。

 そして、三人で玉集計を終えて帰ってきた。
『さあ。では現在最下位の由羅から行ってみよう!
 赤玉4個、青玉3個、黄玉1個。計5ポイント!
 最終結果46ポイントです!』
「最後まで低い…とほほ」
『次はレナや!
 赤玉…多いな、10個、青玉2個、黄玉6個、白玉1個。計35ポイント!
 最終結果142ポイント!』
「まあまあね。…って、微妙に更紗より上なだけじゃない!」
『三人目、マリア!
 赤玉9個。青玉1個、黄玉3個、白玉2個。計20ポイント!
 最終結果142ポイント!』
「あれ、レナと一緒?」
『さーて。最後の一人、行ってみようか。更紗!
 赤玉2個、青玉4個、黄玉4個、白玉5個。計125ポイント!
 最終結果259ポイント!』
「そうなの?」
『と言う事は、勝者、更紗!!』
 (わあああああっ)
「そ、そんなぁ」
「マリア疲れた〜」
 しゃがみ込んだレナとマリアの前を素通りして、フォシルがマイクを更紗に近づける。
『おめっとさん、更紗。とりあえず景品のリッドはアンタのもんになったけど、どないする?』
「んー…」
 少し悩んでいた更紗だったが、やがてリッドに話し掛けた。
「リッド。週番のお手伝い、してくれる?」
「ああ。それくらいならお安い御用だ」
 アレフに縄を解いてもらいながら、リッドが軽くうなずく。
『これにて、第一回 リッド・ランフォード争奪戦の終了です!』
 (わあああああっ)

 ざわめく観衆が去って行った後。いまだしゃがみ込んだままのレナとマリアだけが校庭に残された。
「ねえ、マリア」
「なーに?レナ」
「…私たち、どうしてこんな事してたんだっけ?」
「さあ?…とりあえず、もう帰ろっか」
「そうね」
 そんな遣り取りの後、レナとマリアがほぼ同時に立ち上がる。
「あ、そうだマリア。今度駅前に新しく出来たケーキ屋さんに行ってみない?」
「うん、行く行く。どうせだったら後何人か誘って行こうよ」
「それも楽しいかもね。さ、行こっか」
「うん!」

 その頃、リッドは…
「くそっ!どうして週番の仕事が校内大掃除なんだよ!」
 その日遅くまで学校の掃除をさせられていたと言う。


<座談会>

リッド:あー疲れた。
更紗:ありがとう、リッド。
レナ:お掃除お疲れさま、リッド、更紗。
マリア:今回もぶっ飛んでたわね…って、作者は?
リッド:さっきここに『座談会』って看板おっ立てて、「じゃ、後はよろしく!」って逃げてった。
レナ:む、無責任…
フォシル:まあまあ。俺がメモ貰って来とるから読んでみるわ。
 『このたびは、にいたかさんのリクエストでリッド争奪戦と言う事で。
  ネタとして、某ハレグゥをパクッた事は言わないで下さいね。
  さて。今回はいかがでしたでしょうか。できるだけはじけた文章を目指していたつもりですが、表現しきれているかどうか。
  とにかく、皆様からのご意見・ご感想をお待ちしております。ではでは』
 との事や。
リッド:偉くマトモだな。
更紗:…そうかな?
レナ:そう言えば、今回は結構会話が連続してたわね。
マリア:ああ。最近はそう言う連続した会話は出来る限り避けるようにしたいって言ってたのにね。
リッド:ま、こう言った感じの文章では仕方が無いだろうな。
更紗:それじゃあ、皆さん。ご意見・ご感想をお待ちしております。
五人:またね〜。

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