<悠久組曲2>番外編2
〜対決!フォシルVSグロウ〜


 その日、フォシルはミッション授業をつつがなく終えて帰路についた。
 彼の横には、もはや見慣れた風景となりつつあるティセの姿があった。
 そして、つつがなくティセの自宅に到着する。
「ほなな、ティセ」
「はいですぅ。フォシルさん、また明日、学校でですぅ」
「おう。またな」
 ティセが家に入って行くのを見届け、フォシルが歩き出す。
「今日も一日、平和に終りそうやな」
 そうフォシルがつぶやいたとき、彼の目に向こうから歩いてくる人物が目に入った。
 白に近い銀髪を頭の後ろで一つにくくり、耳はとんがっている。
 着ている服は一般的な紺色のスーツだ。
(あんまり見ん顔やな…)
 そう思ったフォシルとすれ違おうとした時、その男が囁いた。
「お前が、フォシル・ラーハルト、か」
「は?」
 怪訝に思って男のほうを向いたフォシルの視界に、こちらに突き出される拳が映った。
「な…!」
 (ドン)
 次の瞬間、周囲に重い音が響き渡った。

 次の日の放課後。ルシードが射撃部の部室で銃の手入れをしている。
 その横には、何か疲れた様子のフォシルがいた。
「どうしたフォシル。元気ねえじゃねえか」
「はあ。ちょっと嫌な事がありまして」
「そうか…」
 ルシードはそう答え、手入れの終わった銃を置いて立ち上がった。
 たまたまルシードを見上げたフォシルの目が、驚愕に見開かれる。
「また何かをして、ティセを泣かせたんだな」
「ち、ちゃう!断じてちゃうで!せやから銃を下ろしてぇな!」
「ちっ、違うのかよ」
 至極残念そうにつぶやいたルシードは椅子に座りなおし、次はその拳銃の手入れを始める。
「で、何があった?俺でよかったら聞いてやるが?」
「まあ、聞いてもらうんは構わんねんけど。その前に一つ聞いてええか先輩」
「なんだよ?」
 手馴れた動きで分解作業を行っている拳銃を指差し、フォシルが訊ねた。
「これ、実銃っすか?」
「おう。弾も出るし人も殺せるぞ。それが?」
 さらっと答えたルシードに、フォシルはその場で硬直してしまった。
(じ、実銃って…思いっきり法律違反やないか!何で持ってるねん)
 そう聞きたかったが、また平然と返されそうなのでフォシルは質問を止めた。
「実は、昨日ティセを家まで送って行った帰りのことやねんけど。何か銀髪でポニーテールのエルフの兄ちゃんとすれ違ったんすよ」
「銀髪でポニーテールの兄ちゃん…?」
 どうやらルシードは心当たりがあるらしく、銃を扱う腕が一瞬止まった。
 少しルシードの動きを気にしていたフォシルだったが、間もなく続きを話し始めた。
「まあ、その兄ちゃんがすれ違いざまに『お前が、フォシル・ラーハルトか』とか言って殴りかかって来たもんやから、つい反射的に重力波で十メートルほどぶっ飛ばしてもうて。ありゃあ殺してもうたかな、と思うてブルーになっとってん」
「そ、そうか」
 短く答えたルシードは、つぶやくように付け加えた。
「そう言えば、もうアイツの帰ってくる時期だったな」
「アイツ?知っとるんか先輩?」
 いぶかしげに聞くフォシルに、ルシードは苦笑を浮かべた。
「フォシル。今日の帰り辺り気をつけろ。また来るぞ」
「?……はあ」
 訳が分からなかったフォシルだが、とりあえずうなずいておいた。

 その帰り、フォシルが校門を一歩出たところで、
 (ヒュン)
「!」
 目の前を黒い何かが通り過ぎた。
 とっさに回避したフォシルは、飛来した方向に体を向ける。
「良く避けたな」
 その先に立っていたのは、昨日の晩フォシルが吹き飛ばした銀髪の男だった。
 今日の服装はラフな格好で、右手には金属の短い棒に長い鉄鎖が付いた武器を持っている。
「テメェ…何もんや!」
 構えるフォシルに、男は不敵な笑みを向ける。
「貴様に名乗る名など無い!」
「へっ、おもろいやんか!なら力づくで…」
 腰を落とすフォシルに、男が指を突きつける。
「俺の名前はグロウ!貴様の力を試しに来た!」
「…名乗っとるやないかい」
 なんだか戦闘意欲をそがれたフォシルだったが、それでも構えを崩さない。
「行くぞ!」
 そう叫んだグロウが鎖を引き寄せると、フォシルの背後から何かが飛んで来た。
「ちっ!」
 慌てて回避するフォシルの目に、今度ははっきりと映った。
 鎖の先についた、でかトゲ鉄球。いわゆるモーニングスターのような武器のようだ。
「はっ!」
 グロウが操る鉄球をひきつけて避け、フォシルは地面をけった。
「ラーハルト流武術・閃天!」
 踏み込んだフォシルが繰り出した蹴り上げを、グロウはすんでで避ける。
「甘い!」
 グロウが操る鉄球が、体勢の不安定なフォシルの背中に迫る。
「重障壁!」
 フォシルが背後に放った重力壁が、鉄球を寸前で受け止める。
「ほぅ…なかなか面白い力を持っているな」
「へっ、あんがとさん。…でりゃっ!」
 フォシルが放った拳を、後ろに下がって避ける。
「ならばこれでどうだ!」
 一度大きく引き寄せられた鉄球が、グロウの前で二つに分裂した。
「行っけぇー!!」
 二つに増えた鉄球は、重量が減った事によりすさまじいスピードでフォシルに迫る。
 それを冷静に見つめ、フォシルは右手を前にかざす。
「押し潰されろ。グラビトンボム」
 (ゴッ)
 鉄球は、フォシルに届く遥か手前で地に落ち、動きを止める。
「な…」
 グロウが一瞬動きを止め、視線を鉄球に向ける。
 その視線がもう一度前を見た瞬間、既にフォシルの姿が眼前にあった。
「はっ」
 フォシルが放った拳が、グロウの腹部にめり込んだ。
「…俺の勝ち、やな」
 つぶやいて、フォシルが立ち去ろうとした時、
「ああっ!」
 背後から、ティセの声が聞こえた。
「ああ、ティセ。まだ学校におったんか」
 そう言いながらフォシルが振り返ったが、彼女の視線は倒れているグロウに注がれていた。
「昨日帰ってこないと思ったら、こんな所で寝てたですかぁ?お兄ちゃん!」
「…は?な、何やて?」
 見事に、フォシルの動きが止まっていた。

「フォシル。今回は負けたが、来年は絶対勝ってやるぞ」
「へーへー。さっさと帰れ」
 それから一週間。学校への登下校中、フォシルは常にグロウに付き纏われていた。
 結果は、14戦14勝。フォシルの完勝であった。
「お兄ちゃん、また帰ってきてくださいね」
「ああっ、ティセ!できる事ならお前を連れて行って悪い虫から守ってやりたいんだが、俺が帰ってくるまで待っていてくれよぉ〜」
 笑顔で見送るティセに、グロウが泣き付いている。
 その横で、フォシルはなんとも言えない顔でため息をついていた。
(確かに、ティセに兄貴がおるっちゅうのはルシード先輩から聞いとったけどなぁ……まさかここまでシスコンやったとは)
「それじゃあ、ティセ。お兄ちゃん行って来るよ」
「はい。行ってらっしゃい」
「あ、それからフォシル」
「あ?」
 フォシルが面倒臭げに顔を戻すと、さっき泣いていた顔とは思えないほどさわやかな笑顔を浮かべるグロウがいた。
「今年は僅差でお前の勝ちだったが、来年帰ってきたときこそ決着を着けような」
「じゃぁかしい!完敗のお前が何を言うとる!」
「はっはっは。じゃあ、またな!」
「行ってらっしゃーい」
 さわやかな笑顔で去っていくグロウ、笑顔で見送るティセ。
 …そして、その横で頭を抱えているフォシル。

 そんな、夏の一場面であった。


<楽屋裏!!>

作者:と言うわけで。ネコミミさんリクエスト、「フォシル対ティセ兄(グロウ・ディアレック)」をお送りいたしました。
フォシル:お疲れさん。
ラセツ:作者。確か俺も出る予定なんじゃなかったのか?
作者:え、ええ。そうだったんですけどあの二人の間に入り込める余地が無くって。
フォシル:で、こーなった、って事か。
作者:はい。ネコミミさん、申し訳ありませんです。今製作しているもう一つのお話にはラセツさんも出てもらう予定ですので。
フォシル:ま、許してやってくれや。
ラセツ:あ、そうだ作者。折角だからグロウの紹介をしてやってくれ。
作者:あ、はい。分かりました。えー…
<グロウ・ディアレック>
 28歳で2月8日生まれ・独身/身長:183cm/種族:ヘザー
 長い銀髪を後ろで一つにくくり、目は緑色。
 よその街に就職をしていて1年に1回の割合で帰ってきて、ティセをおもいっきり可愛がる。
 それでもって、妹のことを任せてあるルシードに勝負を挑んでいるが、今まで全敗。
 今回は、ティセに彼氏が出来たということで、彼氏であるフォシルに勝負を仕掛ける。
 ラセツとは知り合いで、昔一緒に遊んだりもした。

作者:と言う事でした。髪の色と目の色、服装、武器以外はネコミミさんに決めていただきましたので。
ラセツ:そう言えば。アイツ、どこからあんな武器を持って来たんだ?
作者:それは、まあ相手が重力波使う変な奴ですからねぇ。それくらい用意して対処しないと。
フォシル:…何かひっかかるんやけど。
 まあ、それはそれとして。ヘザーの髪の色はピンクやないんか?
作者:それはですね。ヒースの花、と言うものがピンク色の他に白い色もあるらしいんですよ。ですから、男性は白=銀髪の方が良いかな、と思いまして。
フォシル:なるほど。一応考えとるんやな。
ラセツ:よし。そろそろお開きとするか。
作者:そうですね。皆様、今回のお話はいかがでしたでしょうか。ご意見・ご感想のほどお待ちしております。
フォシル:ほな、またな〜。

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