<とある午後の風景>


  夕陽が照らす、放課後の校舎。その一室に、三人の生徒がたたずんでいる。
  男子生徒が一人。その前に、女子生徒が二人いる。
  女子生徒は、前後の扉の前に別れて立ち、二人とも男子生徒を見つめている。
  しばらく沈黙が続いていたが、やがて女子生徒の片方が口を開いた。
女子A「どうしても、だめなのね?」
男子「…ああ」
  沈痛な面持ちでうなずいた男子生徒に、もう一人の女子生徒が叫ぶ。
女子B「ねえ、どうしてよ!どうしてダメなの?」
男子「だから、ダメなんだよ」
  女子生徒の声を振り払い、男子生徒は背中を向ける。
女子A「…私とこの子、どっちを選ぶの?」
  少しいらだってきているらしい女子生徒Aの言葉に、それでも男子生徒は首を横に振った。
男子「だから、何度も言ってるだろう?選べねえよそんなもん」
女子B「どっちが良いかって言うだけじゃない。選んでよ!」
  またも、沈黙が訪れた。それでも先ほどと違うところは、背を向けた男子生徒の方が震えていることであった。

  しばらくして、男子生徒が振り返った。

リッド「んなもん選べるわけねーだろうが!どっちも死ぬぞ!」
マリア「リッドひどーい!マリア失敗しないもん!」
レナ「マリアの魔法実験はともかく、何故私の取材協力が死ぬのよ!」
マリア「あーっ、レナまでそんな事言ってる〜!」
リッド「うるせぇーーー!!」
  リッドの絶叫で、レナもマリアも口を閉ざした。
  そんな二人を交互に指差し、リッドは宣言する。
リッド「いいかお前ら。俺は今忙しいんだ。今日は付き合ってられる時間なんて無いんだよ!」
  賢明に怒りを押さえたようなリッドの声に、しぶしぶと教室のドアから離れる二人。
レナ「分かったわよ。今日はあきらめるけど、いつか付き合ってよね、リッド」
リッド「ああ、分かってるよ」
  レナの横を通り過ぎようとしたリッドに、マリアが声を掛ける。
マリア「ねえ、リッド。明日暇?暇だったら…」
リッド「悪いが、これから一週間は忙しいんだ。ごめんなマリア」
マリア「そうなんだ……」
  寂しそうに呟いたマリアに心惹かれそうになったリッドだったが、根性で引き剥がして廊下に出る。

  彼の姿が部屋から消えると同時に、レナの表情が笑顔に歪む。
レナ「ふっふっふ。今日こそは突き止めるわよマリア!」
マリア「うん★行こー!」
  先ほどの寂しそうな表情は何処へやら。満面の笑みを浮かべてマリアがうなずいた。


  二人がリッドに追いついたのは、ちょうど校門あたりであった。
レナ「リッドはっけーん!」
マリア「この方向は…商店街?」
レナ「のようね。さ、行くわよマリア」
マリア「あ、待ってよレナ〜」

  背後から付いてきている気配を感じ取ったリッドは、小さく舌打ちして携帯を取り出す。
リッド「…ああ、俺だ。今、良いか?」
  すぐに応対に出た誰かに一言二言喋り、リッドは歩くスピードを上げる。

  しばらく順調に尾行を続けていたレナだったが、今は少し困った顔になっている。その理由は…
アレフ「そんな事言わずにさ。どこかでお茶でも飲もうよ。焦っても仕方ないぜ?」
  どこからとも無く現れたアレフである。
マリア「もー★アレフうるさい!」
レナ「悪いんだけど、今ちょっと取り組んでるのよ。後にしてくれない?」
  なんとか振り払おうとするレナ達だったが、アレフはさも残念そうに呟いた。
アレフ「そうか…レナでも知り無さそうな、リサとゼファーの極秘情報があるんだけどなぁ」
 (ピク)
  その言葉に、レナの耳が動いた。
アレフ「でもちょっと大きな声で言えるよなネタじゃないんだよな。どこか静かな所で話したいんだけどな〜」
  レナはその場で、唸りながら動きを止めてしまった。
マリア「ち、ちょっとレナ!追いかけなくて良いの?」
  焦った声で聞くマリアに、レナは沈痛な眼差しを向けた。
レナ「マリア…」
マリア「な、何よ……」
  何となく分かったマリアだったが、尋ねずにはいられない様子だ。
  そんなマリアに、いきなり笑顔になったレナが言った。
レナ「リッドは任せるわ。後お願い」
マリア「えーっ!」
  腕を捕まえようとしたマリアをひらりとかわし、レナはアレフの手を取った。
レナ「さ、アレフ。どっかでお茶ご馳走してくれるんでしょ?」
アレフ「ああ。さ、行こうか」
 紳士的な笑みの下でアレフは先ほどの電話を思い出していた。
アレフ(レナを5分足止めしたら明日の昼飯は俺のもんだったよな、リッド?)

マリア「もう!レナってああいう話に弱いんだからぁ」
  そうぼやいて、マリアは前方に向き直る。そこには……
マリア「あれ?リッドは?」
  どうやら、完全にリッドを見失ってしまったようである。


  それからしばらくして。リッドは第三埠頭に到着していた。
リッド「やっぱりここか…」
  周囲を見渡し、倉庫の影で視線を止める。
  どこから取り出したのか、リッドの手には2振りのナイフが握られている。
  そんなリッドの目の前に、まるでにじみ出るように異界の者が姿をあらわす。
  その数、およそ12匹前後。
リッド「ちっ、まとまって出て来やがって!今すぐ地獄に送ってやるぜ!」
  扱いなれた者独自の構えでナイフを握り、リッドは魔物たちに突っ込んでいった。

  そんな風景を、倉庫の上から眺めている人物がいた。
フォシル「やっぱ、アイツも理不尽な運命の内の一人か。どこまで集まるんやろうな」
  寂しそうに呟いたフォシルは、倉庫脇から新たに現れた魔物に向けて右手をかざした。
フォシル「押し潰されろ。グラビトンボム」
  右手から解き放たれた力で、魔物の群れが文字通り押し潰された。
フォシル「ま、後は任せとけばええかな」
  そう呟いて、フォシルは倉庫の上を走って去って行った。

  数十分後。
  第三埠頭倉庫前に立っているのは、リッド一人であった。
  周囲には魔物の死体が…転がってはいない。
リッド「何なんだこいつら?倒したと同時に消えちまったぞ」
  疑問に思ったリッドだったが、近づいてくるサイレンの音に気が付いてその場を後にした。


  次の日。リッドは早足で廊下を歩いている。
  そして、その後を当然のごとくついて来るレナとマリア。
レナ「ねえリッド、新聞部が活動できないじゃない。いい加減手伝ってよ!」
マリア「その前にマリアの魔法の実験を手伝ってくれるって言ってたじゃない!」
リッド「うるせー!いい加減にしてくれぇ〜!」
  とうとう走り出したリッドだったが、角を曲がったとたんに足払いを喰らって前に倒れる。
リッド「は?」
 (ドゲシッ)
  やたらと派手な音を立てて倒れたリッドの目には、一人の少女が映っていた。
更紗「……廊下は走っちゃいけません」
  『週番』の腕章をつけ、ホウキを握り締めている更紗だった。
リッド「…すみません」
マリア「あっ、リッドはっけーん!」
レナ「こんな所で何倒れてるのよ?」
  リッドが起き上がる前にマリアたちに捕まり、連行されて行くリッド。
リッド「は、離せよコラ!俺は忙しいっつってんだろうかー!」
  わめきながら引っ張っていかれるリッドを、更紗が静かに見送っていた。
リッド「見送る位なら助けてくれぇ〜!!」

  まあ、何はともあれ。一日が平和で幕を閉じようとしていた。


あとがき★

作者:と言うことで、終わりましたにいたかさんリクエスト、リッド&レナストーリー第三段!
リッド:今回は、殆ど俺一人だったな。
作者:う、ま、まあね。そんなこともあるさ。
 …ところで。私は他の方のオリキャラを書くとき、それぞれ既存のキャラクターを頭に描くわけですが。リッド君の場合は「エターニアのリッド」と「悠久のルシード」がでてきます。
リッド:なるほどね。
レナ:じゃあ、私は?
作者:レナさんはですねぇ…「エターニアのファラ」と「此花の美亜子」でしょうね。
リッド:ああ。なんだか分かるな、それ。
作者:と言うことで。今回はいかがでしたでしょうか?にいたかさん、レナを動かせなくてごめんなさいでした。
リッド:ま、何はともあれ意見や感想を待ってるぜ。
レナ:またね〜。

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