<とある学生たちの一日>


 ここは悠久学園。いつもどこかで何かがある騒がしい…いや、凄まじい場所である。
 さてさて。今日は何が起こるのやら。

「あー、だりー」
 朝から教室でだらけているのは、リッド・ランフォード。制服を着ている彼は、もちろんここの生徒なのだ。
 最近夜が遅かったらしくボーっとしていると…
(ガラガラ)
「リッド、居るー?」
「げっ、レナ……」
 教室に入ってきたのは、台風の目、もといレナ・ルーベックである。
 椅子から腰を浮かせて逃走経路を確認するリッドに構わず、レナが彼の肩を捕まえる。
「今日こそは突き止めてやるからね。覚悟しなさいよ」
「しつこいって言ってるだろう?そう言う性格は嫌われるぜ」
「あ、ちょっと!」
 腕を振り解いて教室から出るリッドに、レナが追いすがる。
 が、教室を一歩出たところでダッシュをかけたリッドに、一歩出遅れたレナが追いつけることは無かった。

 一方、ここは食堂の一角。二人の生徒が向かい合っている。
 朝、教室に行く前の楽しいお話という雰囲気…
「で、ディアーナ。昨日の晩は何をしていたの?」
「そ、そんなのマリアちゃんには関係ないでしょう?」
 そんな雰囲気じゃないみたいですね。
「関係なくないもん!一週間前にリッドを呼び出してから二人でこそこそして!一体何をしてるのよ!」
「あーもー、だから違うんだってばー!」
(キーンコーンカーンコーン)
 頭を抱えたディアーナにとっては正に救いの鐘となる朝のチャイムに、ディアーナは素早く席を立つ。
「あ、ほ、ほら。もう授業始まっちゃうよ。早く行かないと!」
「あ、待ってよ、ディアーナぁ★」
 いやはや。一体何をしているのやら。

 今日の授業が全て終わって、リッドは速攻で教室を飛び出して廊下を駆ける。行き先は…
「途中で撒くから教えてやんねー」
 あらら。そうですか。
「くそっ!やっぱついて来てるな…」
 後ろを軽く見たリッドは、廊下の曲がり角に隠れた人影を確認した。
「隠れ方が甘いな…マリア、か」
 そう呟いたリッドは、廊下を走るスピードを上げた。

 そして、こちらはレナ。彼女は、ディアーナの尾行を続けていた。
「リッドと合流してからやけに動きが素早くなるから、今の内に対策を考えておかないと…」
 ディアーナは尾行されていることにも気付かず、校門を飛び出していく。
「あ、急がないと間に合わなくなっちゃう!」
 左手の腕時計をチラッと見て、彼女は速度を上げた。

「よし。マリアは撒いたな」
 神社の境内で周囲を見回してうなずくリッド。右手には何かの紙を持っている。
「これで、足りればいいんだけど…な」
 紙を見下ろして、リッドが呟いている。
 そこに、ディアーナが駆けつけた。
「すみません、遅くなりました」
「ああ、待ってないぜ。今来たとこだ」
 笑顔で応えるリッドに、ディアーナも嬉しそうな顔を見せる。
「よかった。じゃあ、行きましょうか」
 リッドの腕を引こうとするディアーナを、リッドが止める。
「ディアーナ。お前の右斜め後ろの木の向こう、レナがいる」
「えっ…!」
 もう慣れているのか、ディアーナは目線だけで背後を確認した。
「…たしかに、居ますね。気がつきませんでした。さすがリッド君ね」
「ま、俺も伊達に追い掛け回されちゃいないからな」
 軽く肩をすくめ、リッドは境内の奥へと歩き出した。
 それを追ってディアーナが、そして背後のレナが移動する。

 その後、気がついたときにはリッドとディアーナ二人だけになっていた。…レナさんは?
「だから撒いたんだよ」
「リッド君、誰と話してるんですか?」
 不思議そうに訊ねるディアーナに、リッドは軽く返した。
「あ、いや。何でもない。行こうぜ」
「はい。そうですね」
 そして、彼らは宝石店、映画館、喫茶店……とにかく、そんなところを回り歩いた。

 一方、リッドたちを見失ってしまったレナは、マリアを連れてディアーナの家の前を見張っていた。
「レナ。本当にここに来るの?」
「大丈夫。今日はディアーナの家族は全員外出してるから。デートの後はここに来るはずよ」
「何処からそんな情報を仕入れてくるのよ…っていうか、リッドはデートじゃないよ!デートにはマリアが誘うんだもん!」
「はいはい。分かったから静かに待ち…しっ、来たわ!」
「えっ!う、うそ……」
 茂みに身を隠す二人を置いて、大きな荷物を抱えたリッドと楽しそうに話しているディアーナが家に入って行く。
「やっぱり、あの二人デキてたのね。フフフ…スクープよっ!」
「リッド、本当に来ちゃった…」
 レナは勝利の笑みを浮かべ、マリアは困惑の表情で。静かに家に近づいていく。
 扉の前まで移動したレナは、懐から小型トランシーバらしきものを取り出す。
「はい、マリア」
 そこから伸びている2本のイヤホンの内一つを自分で付け、もう一つをマリアに渡す。
「何、これ?」
 イヤホンとトランシーバを交互に見ているマリアに、レナはさらっと告げた。
「レナ様お手製の盗聴器ってやつよ。ディアーナの家の電話にもう盗聴できるように取り付けてあるから、後は波長を合わせれば話し声は筒抜け、って寸法よ」
「す、寸法よって…犯罪じゃない、これ!」
「硬い事言わないの。愛しのリッド君の秘密を知りたいんでしょう?さてと。周波数は…」
 驚いているマリアを気にすることも無く、レナは手元のチューナーをいじる。
「ん〜…よし、合った!」
「え?どれどれ?」
 …なんだかんだ言って、マリアも気になるようで。

『ううっ、リッドさん、終わりましたよ』
『ああ。…って、なんでそんなに泣いてるんだよ。そんなにイヤならやめるか?』
『えっ?』
『俺は別にそれでも良いんだけどなぁ』
『そ、そんなぁ…ごめんなさい』
『ま、謝ることはねえさ。今のは俺もちょっと悪かった。…じゃ、今日はこれだな』
『こ、これって…お、大きくて黒い上にピクピクしてるんですけど……』
『当り前だろ?生きてるんだから。…怖かったら止めるか?』
『そ、そんなぁ…ううっ……』

「こ、これってまさか…」
「フ、フフフ…リッド、まさかディアーナにそんなことを強要しているとは…」
 冷や汗を浮かべながら少女が二人扉の前にうずくまっている様子は、少し、いやかなり異様だった。

『おいおい。まだ半分も残ってるぞ』
『で、でも…気持ち悪いですよぉ』
『我慢しな。慣れればそれほど嫌じゃねえさ』
『ううっ…リッド君のイジワル……』

「ね、ねえレナ!止めなくていいの!」
「そ、そうね。さすがに放っておくわけにも行かないわね…よし、踏み込むわよ!」
「うん!」
 二人はイヤホンを耳から引き抜いて、扉に背を預ける。
「マリア。この際だから魔法で扉壊しちゃいましょう!」
 どうやら相当慌てているらしいレナの無茶な注文に、マリアは真顔で返す。
「そ、そうだね。よーし……えーい!!」
(チュドーン)
 珍しくマトモに発動した魔法によって暴かれた部屋の中では…

「なっ…お前ら、なんでここに!」
 椅子に座っていたリッドは、いきなり飛んで来た扉の破片(とマリアたち)をかろうじて避けて声を上げる。
 そんな声に、奥からディアーナが出てきた。
「どうしたんで…ああ〜っ、私の家の扉が!」
 包丁片手に驚いているディアーナの前で、やっとマリアとレナが起き上がる。
「あ、あたたた…」
「もー!マリア、あんなところで魔法なんて危険じゃない!」
「ぶー★魔法って言ったのはレナじゃない!」
「私は言ってないわよそんなこと!」
「おい、マリア、レナ」
 このまま放っておけば何時まで続くか分からない二人の言い合いは、怒りのこもったリッドの声で中断させられた。
 彼の手には、レナの仕掛けたらしい盗聴器まで握られている。
「こんなものまで用意して、何をしていたんだ?」
「え?あ、アハハハハ……」
 笑顔でごまかそうとするレナに対して、マリアは毅然と向かい合った。
「リッド!マリア聞いてたんだからね!」
「な、何を?」
 マリアの気迫にたじろぐリッドに、マリアが盗聴器を突きつけた。
「何を、じゃ無いわよ!嫌がる女の子を無理やり脅して恥ずかしいことをさせるなんて、人間として最低だよ!」
「・・・・・・は?」
 マリアが怒っている理由がわからず間抜けな顔を見せて硬直しているディアーナとリッド。やがて、「あ。」とディアーナが呟いた。
「え、ええっと。マリアちゃん、なんだか大きな勘違いをしてるみたいだけど…」
「へ?勘違い?」
「そう。勘違い」
 今度はマリアがきょとんとした顔になり、ディアーナが顔を少し赤くしながら説明した。
「あ、あのね。私はリッド君に料理を教えてもらっていただけなんだよ。レナちゃんやマリアちゃんの想像しているようなことはないよぉ」
「ええっ!でもさっき何だか嫌がってたじゃないの!」
「あ、あれは…」
 ディアーナは一度視線を厨房に向け、すぐにレナに向き直る。
「い、生きたナマコを捌いててね」
「な、ナマ……なーんだ。それだけなの?」
 心底残念そうなレナに、リッドが引きつった笑みを向ける。
「レナ…何を期待してるんだよお前は……」
「ま、まあまあリッド君。黙ってた私たちも悪いわけだし」
「そ、それじゃあ…リッド、マリアの事嫌いになったんじゃないのね?」
 見上げるマリアに、リッドが慌てて訂正する。
「あ、当り前だろ!お前を嫌いだなんて誰が言ったんだよ」
 そう言って、リッドはポケットから小箱を出す。
「何、これ?…わぁ…!」
 それを受け取ったマリアは、それを開けて大声を上げた。
「マリア、俺の誕生日にブレスレットくれただろ?だからその礼と、もうすぐの誕生日祝いをかねて、な」
 リッドは、そう言いながら箱から銀色のリングを出し、マリアの指にはめる。
「えへへ★ありがとリッド!」

 そんなこんなで、お騒がせな一日が幕を閉じた。


☆楽屋裏っ!☆

作者:ごめんなさい。
リッド:な、なんだよいきなり。
作者:にいたかさんへ。少しキャラクターを壊しすぎましたので。
リッド:て言うか、俺はあんなにこそこそしないぞ。
作者:(半分無視)と言う事で、どうだったでしょうか。最近リクエストSSがはじけちゃってますね。
リッド:リクエストは、俺とレナを出してくれ、それだけだったんだろう?きちんと応えてるのか?
作者:うーん…確かに、レナさんが動ききっていなかったかもしれません。でも、まあ登場人物を最低限に狭めましたからね。動かせていた部類に入ると考えて差し支えないと思います。はい。
リッド:そのうち、シリアスを書かなくなるんじゃないだろうな?
作者:それは無いですね、絶対。書いてて一番進むのが「信じていた友人に裏切られる主人公」ってシーンですから。
リッド:うわ、暗。
作者:良いじゃないですか別に。
リッド:まあ、良いけどな。…あ、そうだ。俺がマリアにブレスレットを貰ったのはエンフィールド編じゃなかったっけ。
作者:ああ。そうなんですけど…まあ、こちらでもマリアさんと仲良いんでしょ、リッド君。
リッド:ま、まあね。
作者:じゃあ大丈夫ですよ。何とかなります。
 ま、こんな作者ですが、これからもよろしくお願いします。
リッド:じゃあな〜。

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