復讐(?)のお祭り


 エンフィールドに、今年もこの季節がやってきた。
「…ついにやってきた。この時が!」
 ジョートショップの居候ことシオンが、ポスター片手に拳を握り締める。
「去年の雪辱、晴らしてみせる!」
 大きくガッツポーズをとる頭上を、カラスが一羽飛んで行った。


 次の日の朝。ジョートショップにシオンとテイル、レムの姿が。
「ということで、今年もこの季節がやってきたな」
「?…はあ」
 ジョートショップの一階。朝の挨拶もそこそこにシオンが言った言葉に、テイルは首をかしげる。
「おいシオン。一体何があるんだ?」
 レムの質問に、シオンはさも当然のように答えた。
「何って…ローズレイクフェスティバルに併せて行われる大演劇大会だよ」
「演劇…ですか?……まさか、私に出ろと?」
 なんだか嫌な予感がしたテイルが顔をしかめると、これまた当然といった感じでシオンがうなずく。
「優勝賞金が毎年凄いんだよ。ここで稼げれば、みんなへの特別手当ても出せるってもんだぜ!」
「なにっ、特別手当てだと!テイル、手を抜いたら承知しねーぞ!」
 特別手当てと言う言葉につられて、レムもやる気になったようである。
「よーし。じゃあまずはメンバー集めだな。行くぜ、テイル!」
「行くぜって…まあ、たまには良いですかね」
 シオンに無理やり参加させられる形となったテイルだが、まんざらでもない様子である。

  それから数時間して。ジョートショップに数名の志願者が集まった。
シオン「みんな。今回は忙しい中集まってくれてどうもありがとう」
  みんなの前に立って、シオンが挨拶をする。集まったメンバーは…
トリーシャ「ボク、やっぱり主役がやりたいなぁ」
マリア「マリアに任せといてよ!」
アレフ「前回準優勝者の実力を見せてやるさ」
マーシャル「はーっはっはっは!それならワタシは優勝者アルよ!」
レム「って、なんでマーシャルがいるんだよ!」
マーシャル「何をおっしゃるウサギと亀アル。ワタシがいなくて誰が主役をするアルか?」
  自信満々のマーシャルの前に、テイルが歩み寄る。
テイル「マーシャルさん、私は、エルさんに来てくれるように伝えて欲しいと言ったはずですが?」
マーシャル「だからワタシが来たアルよ。ワタシが来たからには……」
テイル「マーシャルさん、ちょっと」
  言葉の途中で、テイルがマーシャルを連れて外に出る。
  数十秒後。
テイル「マーシャルさんには帰ってもらって、エルさんに来てもらうよう念を押して来ましたから。さ、話を続けましょうか」
  しかし、笑顔で入ってきたテイルに誰も返答できなかった。
  彼の手には、赤く染まったハンマーが握られていた。

  しばらくして、エルが到着した。
エル「分かった。アタシが出れば良いんだね?」
テイル「ええ、お願いします。台本は私が書きますから」
シオン「なにっ!俺じゃないのか?」
  驚くシオンを、マリアが半眼で睨んだ。
マリア「シオン、去年あんな台本を書いておいてまだ書く気?」
シオン「どう言う意味だよ!」
アレフ「去年の演劇大会散々だったもんな、シオンの作品」
シオン「がーん」
  真っ白になっているシオンを無視して、テイルが声を上げる。
テイル「はい。では、ここに台本があるので…?どうしました、皆さん?」
  なんとも言えない顔をしている仲間に、テイルは不思議そうに聞く。
トリーシャ「えーっと、テイルくん?」
テイル「はい?何でしょうか」
  聞こうかどうしようか迷っていたが、マリアにつつかれて意を決したようだ。
トリーシャ「えっと…いつ、台本を書いたの?」
  テイルの手には、数百ページはありそうな台本が握られているのだ。
テイル「さっきですよ。時間がありましたからね」
  いつだよ、おい。その突っ込みを出来る人物は、ここには居なかった。

  そして、テイル監督の厳しい修行が幕を開けた……?

テイル「違いますトリーシャ!そこはもっと早く!」
トリーシャ「えー?」
テイル「返事は!」
トリーシャ「はーい…」

テイル「アレフさん!そこはピーナッツではありません、マカダミアナッツです!」
アレフ「なんだよ細かいなぁ…」
テイル「ここは重要な場面なんですよ!」
アレフ「はいはい…ったく」

テイル「今です!マリア、特殊効果!」
マリア「えーい!」
 (ぽひゅ)
テイル「もうすこし!あと一回り大きく!」
マリア「無理だよぉ」
テイル「無理でもいい!やるんです!」
マリア「ふえぇぇぇ」

シオン「げーこ、げーこ…」
テイル「シオンさん!本物のカエルのようにリアルに!」
シオン「(怒)グェーコ、グェーコ……」
テイル「もう一声!」

エル「お前の悪事もこれまでだ!こ、この……えーと…」
テイル「エルさん、そこで恥ずかしがらない!」
エル「〜っあー!やってやるよ!このプリティエンジェルが成敗してくれる!」
マリア「ぷっ」
エル「マリア笑うなぁ〜!」

レム「あいつら、よくあんな変な劇をやってられるなぁ」
  一人、レムだけは平和そうな顔で木に腰掛けている。
レム「ま、頑張ってもらわないと優勝賞金が手に入らないんだし。ふわぁ〜あ」
  一つ大きくあくびをしたレムが眠っている下で、みんなの猛特訓が続いていた。

  そして、あっという間に演劇大会当日を迎える。
テイル「さあ、後は本番を残すのみです。みなさん、頑張りましょう」
トリーシャ「そうだよね。がんばろー!」
一同『おー!』
  テイルとトリーシャの声に、一同は元気よく声を上げる。

司会者「エントリーナンバー6番、監修テイル・ムーンライトによる、題目『美人3姉妹湯煙ぶらり旅殺人事件 暗躍する光と影、魔法少女と手品師の世紀の大対決の行方は!Don't miss it』です」
  司会者の声を聞いて、テイルとレム以外が動きを止める。
シオン「何なんだよこの題名は…?」
トリーシャ「そ、そーいえば聞いてなかったよね。劇の題名」
アレフ「なんつーか、その…」
エル「題名だけで最後まで展開が読めるな」
マリア「テイル。こんなので大丈夫なの?」
  不安げに聞くマリアに、テイルは微笑んで返した。
テイル「大丈夫ですよマリア。あなたたちならば出来ます。自分を信じて演じきってください」
トリーシャ「まあ、ここまで来ちゃったんだし。みんな、やれるだけやろうよ」
一同『おー』
  先ほどの声よりは、幾分力を失った掛け声であった。

  そして、時は早いもので結果発表へ。
司会者「優勝は、エントリーナンバー6番、テイルと愉快な仲間たちです!」
シオン「な……!」
トリーシャ「やった…のかな?」
アレフ「しかしこの実感の無さは何なんだ?」
エル「さあ?アタシには理解しかねるね。この作品が優勝だなんてさ」
マリア「まあまあ。いいじゃん。賞金もらえるんだし」
  各人が釈然としないものを抱えているところに、テイルがやってきた。
テイル「皆さん、お疲れ様でした。そしておめでとうございます」
レム「おう!俺様の特別手当ての為によく頑張ったな」
  テイルの頭の上にいるレムが、分厚い袋を抱えている。
シオン「おっ!それが優勝賞金か!」
テイル「ええ、そうですよ。はい、シオンさん」
  レムから袋を受け取ったテイルが、シオンに手渡す。
シオン「よし!この賞金をみんなで分けるか」
アレフ「おお!いいねぇ」
マリア「マリアももらえるの?」
エル「マリア。アンタお嬢様だろ?そんなに金が欲しいのか?」
マリア「ぶー★違うもん!労働に見合った報酬って奴を要求してるの!」
エル「本当に?」
マリア「本当だもん!」
トリーシャ「はいはい。エルもマリアもケンカしないの」
エル「フン」
マリア「いーっだ」
  みんなが好き勝手に話している横で、レムがテイルに話し掛けている。
レム「なあテイル。黙ってて良いのかよ?」
テイル「良いんですよ。これは原稿代ですからね」
  テイルの懐には、密かに賞金の2割が収まっていた。

  みんながそのことに気付くのは、また、別のお話。


あとがき

作者:お、終わった……あ、皆さんどうも。デジデジでございます。今回はテイルさんのキリリクと言うことで。
テイル:お疲れ様です。デジデジさん、今回はどういったリクエストだったんですか?
作者:えーとですねぇ。『テイル君を使ってお祭りを』と言うことでした。
テイル:それでこんな文章に…ですけど、私が悪人なのは何故でしょうね。
作者:それはあなたの本性が……真面目に答えますから刀に手をかけないで下さい。
 テイルさんのおっしゃる所には、『テイル君は第二のゼファー』と言うことですので。少々ぶっ飛んでも良いかな、と。
テイル:そ、そうなんですか……まあ、良いですけどね。
作者:と言うことで、こんな文章になりました。実は書き直したい気もしているんですけど、直感で書くのが私の流儀なので(苦笑)
テイル:では、また次の機会にお会いしましょう。
デジ&テイル:さよーならー。
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