<学園祭前で大忙し>
ただ今、悠久学園は学園祭の準備真っ最中である。
そんな中で、文化祭実行委員の一人トリーシャが中心となって一つの計画を進めていた。
『学園祭に有名人を呼ぼう!』計画である。
そのために、彼女はテレビ局などに電話をかけているのだが……
トリーシャ「……あ、そうですか。ええ。…はい。どうもすみませんでした。じゃあ」
知りうる限りの有名人に電話をかけたのだが、
トリーシャ「うーん。ここも駄目かぁ」
どうやら、どこも駄目だったようである。
トリーシャ「あー。明日みんなにどう言おうかなぁ」
彼女の事だ。一緒に計画していた人に大見得を切っているのであろう。
トリーシャ「どうしよう〜」
しばらく頭を抱えていたトリーシャが、不意に立ち上がった。
トリーシャ「とりあえず、買い物行って考えよう。うん!」
そして、そのまま少し離れた場所の駅前デパートから出て来た時。
トリーシャ「あれ?この曲は…」
駅前広場で、ギター弾き語りをしている人物がいる。
そちらにふらっと立ち寄ったトリーシャの前で、一人のギタリストがギターを弾いている。
黒いシャツの下に白いシャツ、そして黒いレザーのズボン。細いサングラスをかけ、黒い髪を少しとさか頭のようにしている。
そして何より、ギターを奏でているその顔が、タレント並みに整っているのだ。
トリーシャ「すごい…」
一曲弾き終えたその人は、小さなため息と共に立ち上がった。
(パチパチパチパチ……)
トリーシャ「凄い!凄いよ。ボク、感動しちゃった」
近寄っていったトリーシャに、その人はサングラスを取りながら応えた。
ギタリスト「ありがとう。私のギターを気に入ってくれて」
トリーシャ「え?私?」
その声を聞いて、トリーシャは少し面食らっているようだ。
ギタリスト「ん?どうしたの?」
トリーシャ「え、えーとー」
少しちゅうちょした後、トリーシャが小声で訊ねる。
トリーシャ「あなた…男の人、だよ…ね?」
ギタリスト「ええそうよ。私の名前はジン」
トリーシャ「あ、ボクはトリーシャ。ええっと、ジンさん。どうして女言葉なの?」
ジン「ああ、これ?これは私のポリシーの一つよ。まあ、簡単に言えばオカマって奴かしら」
トリーシャ「えっ…」
退いてしまったトリーシャを、ジンは目を細めて見つめる。
ジン「でも、綺麗な女の子は大好きよ。あなたみたいな、ね」
トリーシャ「あ、あはははは」
そんな彼女の反応が気に入ったのか、ジンは微笑んで言った。
ジン「ま、もう一曲聞いていってよ。次の曲も自信作だから」
トリーシャ「うん。ここで聴いてるね」
その次の日。放課後の教室にて。
ルシード「なあ、トリーシャ。昨日言っていた有名人って誰か捕まえられたのか?」
トリーシャ「うん。すっごい人を捕まえたよ」
自信満々に言うトリーシャに、同じく文化祭実行委員のルシードは不安そうな表情を隠そうともせずに現す。
トリーシャ「あー、ルシードさん信じて無いんだ」
ルシード「あ?ああ悪いか?」
トリーシャ「もーひどーい!今体育館に来てもらってるから実行委員を集めて来てよ。みんな驚くよ」
ルシード「あー、まあ良いけどよ。じゃあ、今から声をかけてくるから、トリーシャは先に行ってるか?」
トリーシャ「うん。まかせといてよ!」
その数十分後。体育館内には数人の姿があった。
トリーシャ、ルシードをはじめ、同実行委員会の面々である。
目立つ顔を上げると、バーシア、アレフ、由羅などだ。
アレフ「なあトリーシャ。一体誰を連れてきたんだ?」
バーシア「目玉になるような人でしょうねぇ?」
由羅「ま、私は誰でもいいんだけど。キャハハハッ」
ルシード「俺は嫌な予感がするんだが…」
それぞれが喋っている中、トリーシャがマイクを手にみんなの前に進み出る。
トリーシャ「皆さんお待たせしました。町で見つけてきた凄い人!プロ顔負けのギタリスト、ジンさんの登場です!」
彼女の声にあわせて、体育館入り口からギターが響いてくる。
その音と共に、みんなの前に姿を現すジン。
因みに、今日の格好は赤いジーンズの腰に白いシャツを巻き、上には黒いTシャツを着て、顔はばっちりメイクしている。
その格好に疑問を持った人もいたようだが、それを忘れさせるほどのギターの音色に、みんな静かに聞き入っている。
やがて、トリーシャの横まで来た時点で、静かに演奏を終了した。
それと同時に、集まった一同(一人を除く)から拍手が沸きあがる。
ルシード「よりにもよってこいつを連れてくるかトリーシャ?」
拍手が止む少し前になって、ジンが頭を抱えているルシードを発見した。
ジン「あらぁ?もしかしてルシードちゃん?ルシードちゃんじゃない!この学園だったのねぇ」
ルシード「よ、よお。ジン。久しぶりだな」
懐かしそうにしているジンとは違い、ルシードはあからさまに顔を引きつらせている。
トリーシャ「あれ?ルシードさんはジンさんのこと知ってるの?」
ジン「そりゃそうよ。ゼファー君に負けるのが嫌いなルシードちゃんにギターを教えたのは近所の優しいお兄さんの私だもん。ねー、ルシードちゃん?」
ルシード「ま、まあな。…いい加減、そのちゃん付けは止めてくんねぇか、ジン」
由羅「えー、でも可愛い顔のあなたには似合ってるわよ。ルシードちゃん」
ルシード「って由羅までそのノリは止めぇい!」
横から茶々を入れる由羅に突っ込んでから、ルシードはトリーシャに苦笑を向けた。
ルシード「で、まさか今年の学園祭には、ジンをゲストに招いてバンドを組もう、ってか?」
トリーシャ「もちろん!ジンさんにはリズムギターを担当して貰って、リードギターをボク。ドラムを由羅さん。キーボードがバーシアさんで」
バーシア「メインボーカルがルシード。サブがアレフってところかしら?」
トリーシャ「そうそう。うけるよ、絶対。ジンさんもバンドを組んでみたいって言ってくれてるし。どうかな?」
みんなの顔を見渡して聞くトリーシャの横に立って、アレフが全員に聞く。
アレフ「はーい、文化祭実行委員のみなさーん。トリーシャの意見に賛成の人は挙手をおねがいしまーす」
アレフの声に、体育館に集まった総勢20人の全員が手を上げた。
アレフ「よっしゃ!じゃあここに、新生『Eternal Phantasya』の結成だ!」
一同『おー!』
こうして、少し変わったメンバーの参加による文化祭急ごしらえバンドの演奏は大盛況のうちに幕を閉じた。
あとがきだよーん
作者:と言うことで、利華さんからのリクエスト、『オリジナルキャラクター・ジンを使ったSS』。苦心の末書きあがりました。
ジン:ねえ作者クン。このキリリクSSって…書くたびに短くなってない?
作者:それは…気のせいじゃないですか?無理に短くしているつもりは無いですから。
ジン:じゃあ、書きなれない感じで少してこずったから短い、とでも言っておく?
作者:……あんまり変わってない気もしますが、とりあえずそう言うことで。
ジン:にしても作者クン。私の設定、もっといっぱいあったでしょう?使おうと思っていたネただっていっぱいあったんじゃないの?
作者:ああ、それなんですよね。あといくつか考えてはいたんですが…文才及ばず、書けなかったんですよ。悔しいので、次の機会があればそこで書こうと思いますけど。
さて。そんなところでしょうか?
ジン:あ、最後に一つだけ。「Eternal Phantasya」の意味。分かる人が多いだろうけど一応解説お願いね。
作者:はいはい。えー、「Eternal」は言わずもがな「永遠」、そこから転じて「悠久」に。「Phantasya」は「幻想曲」。二つあわせて、「悠久幻想曲」です。
ジン:ありきたりねぇ、ひたすらに。
作者:良いじゃないですか。個人的には気に入ってるんですし。
ということで、利華さんこんな感じでよかったでしょうか?皆さんからもご意見ご感想をお待ちしております。ではでは。
ジン:さよーならー。
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