<エンフィールド大追跡!>


  ここはエンフィールド。日の当たる丘公園で、1人の少年が昼寝をしている。
  薄紫の綺麗な髪に、はじめて見る人は女の子と見まごうばかりの美少年(多少誇張)、リオ・バクスターである。
リオ「くー。くー」
  なんとも平和そうな表情で、暖かい芝生に包まれて眠る少年。まるで…

  そう。まるで嵐の前の静けさを物語るかのように。


  (ドドドド……)
リオ「…ふぇ?」
  遠くから響いてくる地響きのような音にリオが目を覚ましたとき、
アレフ「ちくしょぉぉぉおっ!」
  彼の目の前を、アレフが全力疾走して行った。
リオ「…アレフお兄ちゃん?」
  まだ寝ぼけた様子でリオが呟いた頃。もう1人が目の前を走っていく。
マリア「もー!待ちなさいってば!」
アレフ「だーれが待つか!」
  走り去るアレフとマリアを見送り、リオはまた横になる。
リオ「…ふふふ…むにゃむにゃ…くすくす」
  なにやら、楽しい夢を見ているようである。
  さて。リオは放っておいてアレフを追いかけようか。
  いや、どうせマリアの魔法がらみだ。関わらない方が良いだろう。

  所変わってここはグラシオコロシアム前。数人の見知った顔が歩いている。
トリーシャ「でさでさ。その噂の続きなんだけどね、」
アルベルト「ああ。俺も聞いたことあるよトリーシャちゃん。ローズレイクに現れた巨大深海魚だろ?」
メロディ「ふみゃみゃー!トリーシャちゃん、メロディはそのお魚さん食べたいの・だー!」
アルベルト「だ、駄目だぞメロディ。あんなもの喰ったら腹壊すぞ」
トリーシャ「そうかな?月光魚と一緒で結構行けると思うんだけど。…釣ってみようかな?」
アルベルト「…本気かいトリーシャちゃん?」
  彼女たちの方に、だれかが走り寄って来た。
アレフ「うおぉぉぉぉおっ!」
アルベルト「あ?あれは…アレフか?」
トリーシャ「それに、アレフ君の後ろから誰かが追っかけてるみたいだね」
  トリーシャの視線の先には、大方の予想の通りマリアが走ってきた。
マリア「もー!いい加減実験に付き合ってよアレフぅ!」
メロディ「ふみぃー!追いかけっこ・だーーー!メロディもやるのぉ!」
  凄い速さで遠ざかっていく2人を見送って、メロディも追いかけていく。
アルベルト「えーと…」
  後に取り残されたアルベルトは、同じ状態のトリーシャを見下ろす。
トリーシャ「ボクたちは…どうしよっか?」
  同じように困った表情のトリーシャだったが、唐突に手を叩いた。
トリーシャ「そうだ!キャルさんのお手伝いしに行こうよアルベルトさん!」
アルベルト「ん?第三部隊の手伝いか?…まあ、いいか。よし、事務所に行こうトリーシャちゃん」
トリーシャ「よーし決定!」

  そしてお次は教会の前。ローラが孤児院の子供たちと鬼ごっこをしている。
女の子「まってよーローラお姉ちゃーん」
ローラ「ほーらほら。こっちよ〜」
  ローラたちの横で、セリーヌが洗濯物を干している。
セリーヌ「ふぅ。今日もいい天気ですねぇ」
  平和な雰囲気の中、またも走り来る影がいくつか。
アレフ「ちくしょぉぉぉ!ドクターに助けを求めた俺が馬鹿だったー!」
マリア「まちなさいってばー!」
メロディ「ふみゃぁ〜。アレフちゃん早いのー」
  全身に軽い切り傷を作りながら(どうやら茂みの中を突っ切ったりしたらしい)全力疾走を続けるアレフ。
  そしてそれを追いかけるマリア、メロディ、そして…
ディアーナ「待ってくださいよアレフ君ー!傷をそのままにしておくとばい菌が入るよ!」
  ドクターのところで合流して追いかけているディアーナであった。
  そんな光景にも関わらず。セリーヌはディアーナを呼び止めた。
セリーヌ「あら。こんにちは、ディアーナさん」
ディアーナ「あ、どうも。こんにちは」
  ディアーナはディアーナで、その場で足踏みしながらきちんと答える。
セリーヌ「みなさんは、どうなされたんですか?」
ディアーナ「ええっとですね。実は(中略)という事情がありまして」
セリーヌ「あらあら。それは大変ですねー」
  それほど大変と思っている訳でもない口調のセリーヌだったが、
セリーヌ「それでは、ちょっと待っていてくださいね」
  それだけ言うと、その場から掻き消えた…ように見えた。
ディアーナ「え?あ、あれ?」
  慌てて周囲を見渡すディアーナに、いくつかの声が聞こえてきた。
マリア「きゃっ!」
メロディ「ふみぃ〜〜!」
セリーヌ「えい」
  (ゴキ)
アレフ「ぐぇ・・・・・・・」
  声のした方を見たディアーナの目に、地面に倒れて目を回しているマリアとメロディのはるか向こうで、本来ならありえない方向に首が曲がっているアレフと、そのアレフの頭を抱えているセリーヌが映った。
ディアーナ「え…と…」
  どうして良いか分からずに硬直しているディアーナの横に、いつの間にかローラが立っていた。
ローラ「さ、さすがセリーヌさんね。一瞬でアレフ君に追いついて、ついでにその道すがらにいた2人を撥ねていくなんて」
ディアーナ「うそぉ……」
  唖然としてしまったディアーナの前に、セリーヌが帰ってきた。
セリーヌ「はい、ディアーナさん。アレフさんをお連れしましたよ」
ディアーナ「あ、ど…どうも」
  セリーヌが引きずってきたアレフを、ディアーナが受け取る。
ディアーナ「じゃあ、私はアレフ君の傷の治療(と言うか蘇生)のために病院に戻りますね」
ローラ「うん。またねディアーナさん。マリアちゃんとメロディちゃんは教会で手当てしておくから」
セリーヌ「あらぁ。もうお帰りになるのですか?せっかくいらしたんですしお茶くらい煎れますよ」
ディアーナ「いや、それはまた今度と言うことで…」

  そんなこんなでクラウド医院。
トーヤ「なるほど、古代魔法の人体実験か。確かに、全身全霊をかけて拒否したい気持ちは分かるがな」
アレフ「だろ?俺だって、少しの実験なら手伝うくらいはやるけど。今回はヤバそうだったんだよ。何となく」
  トーヤのおかげで復活したアレフが、トーヤに逃げていた理由を説明している。
トーヤ「しかし、いくら逃げていたからと言って怪我を放っておくものではないぞ。小さな傷でも致命傷になってしまう場合もあるからな」
アレフ「もー、ドクターは大げさだな。セリーヌの一撃はともかく、こんなかすり傷だけじゃあ死なないって」
トーヤ「まあ、なんにせよ大事にならずに済んでよかったな」
アレフ「ああ。ありがとうなドクター」
トーヤ「フン。俺は医者として当然の事をしているまでだ。さあ、復活したならさっさと帰れ」
ディアーナ「お大事にー!」

  病院を出たアレフの目の前に、1人の少女が立っていた。
マリア「あ、アレフ!」
  心配そうにうつむいていた顔を上げるマリアに対して、既にアレフは走り出す準備を整えていた。
アレフ「ま、まだ実験台になれって言ってるのか?」
マリア「ち、違うよ。マリア、心配だったんだよ。アレフが病院に運ばれたって聞いたから」
  心から心配しているマリアに一瞬驚いた表情を見せたが、アレフはすぐに迷惑そうな顔を作る。
アレフ「はいはいそりゃどうも。元々だな、俺がセリーヌに殺されかけたのはお前のせいだろうが」
マリア「だって、マリアが手伝ってって言った時に逃げ出すんだもん」
アレフ「じゃあ、お前の言うところの実験とやらに付き合って、俺が死なない可能性はいくつだったんだ?」
マリア「ぶー★ひどーい!マリア、失敗しないもん」
  こちらに抗議するマリアに軽く手を振って、アレフは歩き出す。
アレフ「はいはい。その言葉は魔法を成功させてから言えよ」
マリア「もー、アレフのバカっ!…ねえ待ってよー!」
  マリアも、その後を追いかけて走り出した。
  すぐにアレフの前に回りこんだマリアの、アレフを見上げながらの言葉。
マリア「ねえねえアレフ。お昼食べに行こうよ」
アレフ「は?どうして?」
  首をかしげるアレフに、マリアが「お昼だから」と即答する。
  そんなマリアに苦笑していたアレフだが、すぐにうなずいた。
アレフ「仕方ないな。ラ・ルナにでも行くか。…ついでに、一品だけなら奢ってやるよ」
マリア「わーい。アレフ大好き!」
アレフ「おいマリア、一品だけだからな」
マリア「分かってるって。さー、なーに食べようかなー?」
  ワクワクしているマリアを、アレフは優しげな瞳で見つめている。

  今日も、いつもの平穏の内に一日が過ぎようとしていた。


あ、あとがき…

作者:ど、どうも。デジデジです。えー、この作品はアサシン様の依頼を元に作成したのですが…
アレフ:本当にリクエスト通りなのかよ?
作者:う…ちゃ、ちゃんとオリジナルキャラクターさん無しで作成しましたよ。
アレフ:でももう一つの「壊れ系」ってのは?
作者:くっ……それは…
アレフ:もう本当にすみませんアサシンさん。こんな至らない作者ですが、これからも末永いご支援をお願いいたします。
作者:くっ!言われっぱなしは悔しいが、事実だから反論できない…まあとにかく、これからもお願いします。
アレフ:ところで、何故俺とマリアなんだよ?
作者:え?……ひ・み・つ(はぁと)
 (ドゴォッ)
アレフ:気持ち悪いんじゃー!
トリーシャ:じゃあ、また次の機会にね〜。
メロディ&トリーシャ:またね〜〜
アレフ:あっお前ら!勝手にしめるなよ!

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