「という訳だ。やってくれるか?」
悠久学園の珍教師ゼファー・ボルティは言った。そのゼファーの前には背の高いゼファーを見上げていたのが疲れたのか首を抑える更紗が立っている。
「よく分からないけど・・・」
「要するにだ。暇潰しと言っては何だがミッション用のこの機器にプレステゲームのプログラムをコピーしていたのだ」
「それって犯罪だよ・・・?」
純な少女の更紗。悪徳教師の道を健気にも正そうとする。いや、正そうとしているのかはわからないが・・・
とにかく、それは良いとして・・・・・・この悪徳教師はそう簡単には折れないようだ。
「更紗、信号無視をしたことはあるか?」
「・・・うん」
「ではそれも犯罪だ」
「・・・・・・」
そう、更紗だって信号無視くらい有る。例えばお使いで急いでいた時だとか、如何にも更紗らしい信号無視だ。微笑ましささえ感じられる。
だが、この悪徳教師は違う意味で微笑みながら言った。『それも犯罪だ。てめぇも同罪なんだよ更紗ちゃん』と・・・
「話を戻すぞ、コピーして仮想空間でプレイできるようにしようとしたのだが、コピーの途中で何をどう間違ったのか・・・」
罪の意識など微塵も無く、淡々と話すゼファーを見上げ、身長差からまた首が疲れてきた更紗。更紗の眼は『全部が間違ってる』と語っていた。
そんな更紗の思惑など知る由も無く・・・・・・いや、知っているだろうが。ゼファーはお構い無しで続ける。
「プログラムが狂ってしまってな。仮想空間に入ってそれを修正して欲しいのだ」
「私が・・・?」
「そうだ今回は更紗だ。やってくれるか?」
「・・・別に良いよ?」
「そうか。では早速頼む」



これを読む前に・・・・・・ハッキリ言ってネタバレしすぎです(爆)
これからやろうと思っている人は読まない方が良いかと(汗)



エースコンバット3 エレクトロスフィア



西暦2030年
ユージアにおいてかねてから緊張が続いていた多国籍企業体ゼネラルリソースとニューコムが大陸を巻き込んだ紛争を繰り広げていた。
フェイスパークでの交戦を皮切りに各地で戦闘を続けていた両社だが、NUN新国際連合UPEOが治安維持に乗り出し、両社の紛争を鎮圧する。その繰り返しだった。
だが、そのUPEOの仕組んだ策略によってゼネラルとニューコムは全面戦争に突入。それはすでに歯止めの利かない状態であった。
そんな時、彼ら『ウロボロス』が現れた。ウロボロスはアビサル・ディジョンを指導者に迎え、人類の革命、欲からの開放として『電脳化』を掲げ、欲の象徴である旧時代の権力を排除していった。
だが・・・


「レナ、仮を今返す!!」
UPEO特別航空部隊SARF所属の戦闘機パイロット、エリック・イェーガーのSu−37 通称フランカーが二発のミサイルを放つ。
ミサイルは一直線にウロボロスの要とも言える空中空母『スフィルナ』へ向かっていく。そのスフィルナはすでに瀕死とも言える状態。所々から炎が上がっている。
 ドゴォォォォンッ!!
追い討ちとも言えるミサイルを受け、スフィルナが炎に包まれる。スフィルナは凄まじい爆音と共に海面へ墜落していった。市街地に墜落しなかったのは運が良い。あわや大惨事だ。
「《クックック、それで良い。あの男は死んだ》・・・・・・」
Su−43 ベルクトを駆る『彼』の頭の中で聞こえる声。いや、頭などという部位が『彼』に存在するのか?そんな物は無い。
何故なら『彼』はニューコムの研究員であるサイモン・オレステス・コーエンの創り出したAIなのだ。
肩書きはエリックと同じくUPEO特別航空部隊SARF所属の戦闘機パイロットなのだが・・・実際はサイモンの復讐の為に創り出された存在だった。彼がサイモンから与えられた任務(正確には違うが・・・)はゼネラルリソースのエースであり、ウロボロスの指導者アビサル・ディジョンを完全に抹殺する事。
しかし、そのディジョンはもはや肉体を持っていない。過去にテロによって肉体を失ったしまったのだ。が、その直前に彼は『電脳化』を行っていた。
すなわち、人間の人格などの情報を解析、エレクトロスフィア内で起動させ、電子の生命とする技術だ。
そして、ディジョンに電脳化処理を施したのがサイモンの元愛人でディジョンの愛人であったマーサ・ヨーコ・イノウエだった。彼女はテロによって死亡したが・・・
まぁ、簡単に言ってしまえば嫉妬だ。科学者というのは公式以外は何も持たないと言われていたがどうやらそれにも頷ける。
「後は、あいつだ。パークの奴に仮を返す」
ウロボロスを壊滅させ、エリックは言った。後は自分達を利用し続け、両社を全面戦争に持ち込ませ、同僚すら葬らせたあの男、UPEO総司令ギルバート・パークに仮を返す。
二機の戦闘機はフルスロットルで夕焼けに染まる空に白線を描きながらUPEO本部へ向かっていった。スフィルナの最期を背に・・・
だが、スフィルナは死んだがディジョンはまだ死んではいなかった。爆炎の中から一機の戦闘機が脱出した。宇宙船のようなシルエットの黒い戦闘機だ。
ナイトレーベンほどとは行かないがかなりの機動性と出力を有した機体。UI−4054 オーロラ・・・ディジョンの専用機だ。
「くそ・・・あと、あと少しだった。あと少しで世界は私のように・・・」
スフィルナの炎を見下ろし、ディジョンは歯噛みした。いや、正確に言ってしまえば彼には歯など無いが・・・
「ならば・・・ならばこの世界など!!」
その時のディジョンは最早正常な思考を保っていなかった。思考のコピーデータが狂っていたのかもしれない。オーロラは市街地の民間ビルをロックオンする。
と、その時・・・
「そこまで」
ディジョン機、オーロラの通信機から少女の声が聞こえた。見ると太陽の中から一機の戦闘機が急降下してきた。
その戦闘機は機首を挙げ、水平飛行に移る。ディジョンはその機体を警戒しながらその機体を囲むように飛行する。
「ウロボロス機・・・・・・ではないな?」
「バグを消す・・・」
ニューコム製戦闘機R−103 デルフィナス3を駆る更紗だ。デルフィナス3は青を基調とした機体なのだが、何故かキツネ色だ。キツネだからか?
「そこ、うるさい・・・」
ごめんなさい・・・
「とにかく、バグは消す」
「小娘が、お前如きに私が消せるというのか?」
「消す。貴方はもうこのルートには登場しないの・・・」
更紗が静かに言う。と、デルフィナス3が素早くオーロラの背後に付く。ロックオン。6発のミサイルがオーロラへ撃ち出される。短距離ミサイルだ。
「何?!」
ディジョンは反射的に機体を旋回させ、何とかミサイルを避ける。ディジョンは驚いただろう。何故ならデルフィナス3には短距離ミサイルは装備できないからだ。
まぁ、そこはその機体がゼファー特製デルフィナス3ライシアン仕様だからだ。通常のミサイル、短距離ミサイル、対地識別ミサイル、多弾頭ミサイル、と何でも有りなのだ。
「お前!!何なんだ!!」
「・・・何って、管理者代理。それと、貴方は私と同じ声の人を殺した」
「レナ?まさか、その声はレナか?!」
「違う・・・」
「ならばお前は誰だ!!」
「だから・・・管理者代理・・・」
少しディジョンの罵声に押されたのか、更紗は自信なさげにポツリと呟く。が、ディジョンの耳には届かなかったらしい。彼は更紗を敵と判断する。
オーロラが螺旋を描くように旋回し、直進していたデルフィナス3はその螺旋の中を抜けるようにしてオーロラの前に出てしまった。
後ろを取ったディジョンはデルフィナス3をロックオン。即座に一発のミサイルを放った。
良い位置から撃たれたミサイルは大きく旋回しながら回避行動を取るデルフィナス3に向かっていく。避けられない。
 ドォンッ!!
更紗のデルフィナス3が大きく揺れた。ミサイルが直撃し、50%弱のダメージを受けた。もう一発ミサイルを受ければ墜落だ。
だが更紗の表情からして動じてはいない。・・・・・・いや、表情はそのままだが額に漫画のような十字の血管が浮かんでいる。実はむかついているらしい。
「うざい・・・ゼファー、設定を変えて《む、わかった》」
血管を浮かばせたままで更紗は言う。と、その瞬間、デルフィナス3のHADのミサイル表示が6個から1個へ変わった。そして、機体が変化していく・・・
キツネ色のデルフィナス3から三日月というかブーメランのような機体、これまた何故かキツネ色だが・・・XR−900 ジオペリアだ。
ジオペリア・・・X−49 ナイトレーベンの設計を元にニューコムが開発したナイトレーベンの量産型といっても良い機体。ナイトレーベンクラスの超高機動力を有している。
当然、その機動性はオーロラを遥かに超える。ジオペリアが異常に小さい旋回をして360度旋回、一瞬でオーロラの背後を取る。ロックオン。更紗が可愛く、どこか恐ろしく微笑んだ。
「バイバイ♪」
 ドシュンッ・・・
刹那、上空から一筋の緑の光が地面に突き刺さり、オーロラを貫いた。次の瞬間、オーロラがコントロールを失い、黒い煙と爆炎を上げた。
ディジョンは何が起こったのかも分からないまま彼のコアとも言える思考のコピーが消滅。風穴が開き、部品を撒き散らすオーロラは海へ墜ちていった。
オーロラを貫いた緑の光、O.S.L.・・・即ち『衛星軌道上レーザー』だ。ラスボスですらロックオンするだけで100%命中し、一撃で墜とせる最強外道武器である。
考えてみると短距離ミサイルを撃った意味とジオペリアに機体を変えた意味がほとんどないと思うが・・・・・・とにかく更紗の任務は終わった。
「終わり。ゼファー、戻して《む、早かったな。その装備では当然だが・・・》」


ここから先はオマケです。

「おーほーっほっほっほ!!更紗ちゃん、まだ終わってないわよ!!」
ジオペリアの通信機から気色の悪い声がした・・・・・・と言っては殺されそうだが、そんな感じ声がした。
驚いた更紗はレーダーに目をやる。と、二つの反応があった。高度は自分より遥かに高い。いや、これは自分の真上だ。しかもその二機は自分の機体と同じ速度で飛行し、凄まじい速度で高度を下げて自分に突っ込んでくる。
衝突する。と思った瞬間、更紗はヨーイングを掛ける。普通の機体のヨーイングではたかが知れているが、ジオペリアは別だ。かなりの距離を移動し、その二機の特攻コースから外れた。
 ・・・ィィィィィィイイイイイイィィィィィィ・・・
ドップラー効果というものを感じた更紗だった。二つの機体はジオペリアを掠めていく。すると、すぐに機首を挙げ、V字に散開し、水平飛行へ移る。
「・・・誰?」
レーダーで二機の動きを警戒しながら更紗はその戦闘機に通信する。と・・・
「はぁ〜い♪ジンちゃんよ〜♪」
ジンだ。女言葉を使ってはいるが男である。ちなみに機体はX−49 ナイトレーベンだ。レナが搭乗し、すでに墜落した機体が最初で最後だったはずだが・・・
そして、ジンの他にもう一人・・・尾翼の無いシルエットが特徴的な黒いXFA−36A ゲイムを駆る何者かがいる。と、その何者かにジンが言う。
「・・・・・・なんで繋げないの!!ほら、シュウちゃんも言いなさい。・・・・・・墜とすわよ?」
ジンの機体、X−49 ナイトレーベンのレーザーキャノンの照準をしっかり合わせたジンがゲイムを駆る何者か、シュウに言う。脅しを含んだ声で・・・
余談だがナイトレーベンのレーザーキャノンは海上移動都市メガフロート(人口の島みたいな物)を一撃で沈めるスグレものだ。
「早く!!ほら、さっさと言う!!」
「は、はぁ〜い・・・シ・・・シ、シュウちゃんよぉ〜ぅぅ・・・」
「という訳で!!暇だから遊ばせて貰うわよ!!」
ジンがそう言うとナイトレーベンが加速し、ジオペリアを追う。先手必勝。ナイトレーベンがジオペリアの後ろを取った。が、当然振り切ろうとする更紗。
そして、ゲイムもそれに続こうとする。が、ゲイム程度では出力も機動性が違いすぎ、追い付けない。
全く着いていけないシュウを余所に白い軌跡が複雑に絡み合う。超高機動性を有する機体同士だけあってかなり複雑に軌跡が絡み合っている。ちなみに機体性能は互角だ。
だが、次第にジンが押され始めた。ジンのナイトレーベンより動きの俊敏なジオペリアがジンの視界から消え、レーダーに目を向けた一瞬の虚をついて360度旋回、ナイトレーベンの後ろを取った。
O.S.L.はロックオンすれば勝負が決まる。即ち『後ろを取られる=死』なのだ。ジンもそれは十分に承知しているが、HADに赤い文字が点灯する。ロックオンされたのだ。
「バイバイ♪」
またも可愛くも恐ろしい、しかも『勝った』と言わんような笑み。それを浮かべながら更紗はトリガーに手を掛けた。このトリガーを引けばジンは墜ちる・・・・・・が。
「やるわね更紗ちゃん。でも、まだまだ温いわよ!!」
突然ジンは機体を急降下、更紗はそれを追う。と、一瞬だけロックが外れてしまった。しかし再びロックオン・・・・・・だがそれはジンの機体、ナイトレーベンではなかった。
「ちょっ!!ジンさん?!さ、更紗?!」
黒い尾翼の無い機体。そう、シュウのゲイムだ。ジンは故意にシュウへとロックを擦り付けたのだ。かなりの技量を必要とするだろうが、かなりの外道技である。
撃ち落されてはたまらない。ゲイムは大きく横へ旋回し、逃げようとする。が、機動力に差がありすぎた。ジオペリアを振り切れるわけが無い。
「更紗、待て!!俺は無理矢理連れてこられて、その、ここで撃ち落されるとヤバイ所まで!!」
だが、更紗はそんなシュウの命乞いとも言える言葉を聞きつつも変わらぬ笑みを浮かべてトリガーに指を掛けた。
「シュウ、バイバイ♪」
 ドシュンッ・・・
緑の光がゲイムを貫いた。一拍子遅れてゲイムに衝撃が走る。と、コントロールが完全に効かなくなり、黒い煙を上げながら市街地へ落ちていく。
「更紗の人でなしぃーっ!!ジンさんの馬鹿ぁーっ!!」
 ドォンッ・・・
悲痛な叫び声を挙げてシュウは墜ちていった。ゲイムは市街地のビルに衝突。爆発音と共に爆炎に飲み込まれた。ジンを怨みながら・・・
「よくやったわシュウちゃん!!まさにコフィン、棺桶ね!!それは良いとして更紗ちゃん、策にはまったわね!!」
「?」
ジンが何か言ったようだが、更紗はそのままジンのナイトレーベンをロックオンする。やけにすんなりとロックさせるジンに疑問を持つが、更紗はトリガーを素早く引いた。
が・・・
「・・・・・・あれ?」
何も起こらなかった。緑の光は現れない。更紗は思わず何か可愛い声を一つ上げてしまった。と、そんな更紗にジンが・・・
「おーほーっほっほっほ!!更紗ちゃん、O.S.L.は一度撃つとしばらく撃てないのよ」
「あ・・・」
そう、O.S.L.は一度撃ってしまうと数秒間は撃てないのだ。それ故に敵が多い場合ではO.S.L.よりも通常ミサイルのが使い勝手が良い場合もある。
「終わりよ。さ・ら・さ・ちゃん」
O.S.L.が不発に終わり、それで終わると思って油断していた更紗はジンに後ろを取られてしまった。ハッとして回避行動を取るが時すでに遅し・・・
ここでミサイルを撃ってもジオペリアの機動力で数発は回避できるだろうが、一発くらいは受けるだろう。更紗の機体はあと一発でもミサイルを受ければ墜落なのだ。
ちなみに仮想空間とはいえここで撃墜されると結構ヤバイところまで意識が落ちてしまうだろう。
「・・・っと、はいお終い」
「・・・?」
「結構エキサイティングな一時だったわ。ゼファー、戻して《ああ》」
更紗のロックを解き、ジンは満足そうに言う。と、疑問符を浮かべる更紗を余所にナイトレーベンが消えていく。
まったく何をしに来たのかわからないジン。ぽつんと残された更紗とジオペリア。そしてヤバイ所まで落ちたシュウ。余談だがシュウに至ってはサルベージに数時間掛かり、危うくあっちの世界に旅立つところだったと言う。
「・・・ゼファー、私も戻して《む、そうだったな》」



という訳で、特別ゲストでジンさんに出演していただきました。
なんだかよくわからない話になってますけど(汗)

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