LINEAGE TheBloodPledge  司珠呂の旅立ち
  ─エピソード1  Remains─




 ふと、目が覚めた。
 少しくすんだ木の天井が、ちょっと低く思えた。
 右手をゆっくりと上げてみる。次に、左手。
 それから、私は周囲を見渡した。
 そして、こちらを見ている瞳に出会った。

「気が付いた?」

 その人は、黒く艶やかな長髪に綺麗な顔をした、私より年上に見える人だった。
 言葉も無しに頷いただけの私に、その人は優しい笑みを浮かべてくれる。

「よかった。あなたが倒れていた時は、もうダメなんじゃないかって思ったのよ」

 それから、その人は据わって居た椅子から立ちあがった。

「私は、レイミア。ウィザードよ。 あなたは?」
 私?わたしは…



 あ、あれ????




「記憶喪失、ねぇ…」
 レイミアさんは、私の前に座って難しい顔をしている。
 私は、珠呂。その名前だけは思い出したんだけど、自分が何をしていたのか……全然覚えていなかった。
「何か、思い出しそうな事は無い?」
「はい。この街、ええと…」
「シルバーナイトタウン、ね」
「あ、はい。ここの風景も、全然思い出に引っかかりませんし」
 今、私はレイミアさんが借りた宿屋の一室に居る。そこから見下ろす大通りには、数多くの冒険者たちが行き来している様子が窺える。
「それで、あなたは自分がエルフだ、って事は覚えているの?」
「えるふ・・・?」
 首をかしげた私を見て、レイミアさんは大きく溜め息をついた。


「ふーん。キオクソーシツなんだ、キミ」
「あ、はい」
 レイミアさんが連れてきたのは、まゆぴさんというエルフのお姉さんの所だった。
 私を隅から隅まで見回して、まゆぴさんは軽く首を振った。
「ごめん、レイ。あたしもこの子には覚え無いわ」
「そう。困ったわね…」
 隣りで立っていたレイミアさんも、困った様に眉を寄せている。
「あ、そだ。キミ、持ち物とか無いの?」
「持ち物…ですか?えっと…」
 まゆぴさんに訊ねられた私は、慌てて持っていた布の袋を開いた。中から出てきたのは…
「ウッドンジャケット」
「ショートボウ」
「レッドポーション10個」
「シアンポーション2個」
「アロー、500本」
「へー。ちゃんと一応の用意はしてあんじゃん?」
 まゆぴさんは嬉しそうにそう言ってくれた。けど…
「あ、あの…持ち物全部言うんですか?」
「そうね。教えてくれるかしら?」
 レイミアさんに確認したら、笑顔で返されてしまった。
「…イエロースパーク3本」
「……オベイクポーション5個」
「………ご、5アデナ」



「ほらほら、もっと腰入れて蹴る!」
「は、はぁ〜い」
 私は、今村の端っこにある案山子相手に戦いの基礎を教わっていた。
 持ち物もそうだけど、ある程度戦える状態にしないとどこに行くにしても無理があるからと言う事らしかった。
「目標は、片足で案山子を蹴り倒せる事〜」
「いや、それは無理よ」
 心強い(??)声援を背に、私の修行が始まった。


 そして、数時間後。
「はい、お疲れさま〜」
 そう言って、まゆぴさんが飲み物を差し出してくれた。汗だくだった私はそれを受けとって一口含み…
「すっぱぁ〜〜〜〜い!!」
 ついつい叫んでしまった。
「ああ、そりゃすっぱいわね。レモン果汁100%だからv」
「な、なんつーもの渡すんですかまゆぴ先輩…」
 私が渡されたレモンジュース片手に困っていると、レイミアさんが向こうから歩いていた。
「珠呂、頑張ってる?」
「はい、何とか」
「そう。それじゃ、これはおねーさんからのプレゼントね」
「へ?」
 そう言って、レイミアさんが私に大きな布袋を差し出した。…って、これ!?
「だ、だめですよこんなに!」
「良いのよ。どうせ半分が拾い物だしね」
「何々?何をあげたのレイ」
 興味津々と言った様子でまゆぴさんが覗き込む。
「へぇ〜エルヴンブレストプレートに、ロウブーツとドワ兜。初心者にはちょっと勿体無いんじゃない?」
「そ、そうですよ。こんなにいっぱい、戴けませんよぉ〜」
「だから、良いのよ。おねーさんからの門出祝いだと思って受け取ってちょうだい?」
「は、はぁ…」
 悪い気がしたけど、笑顔で言われると断れないし…嬉しい事は確かだし。
「じゃー、あたしからもこれ、あげちゃおっか」
 そう言って、まゆぴさんがマントと弓を差し出してくれた。
「えでも…」
「いーのいーの。使ってないのだし、初心者エルフならこれくらいは持ってないと、ね?」
「あ、ありがとうございます(汗)」
 まゆぴさんがくれたのは、エルヴンボウとエルヴンクローク。
 これで、何とか装備は整ったのよね?



 そして、今私はシルバーナイトタウンの入り口に立った。
「じゃ、目標はマザーツリーかあさまに会う事」
「はい。ここからずっと北に上った所のエルフの村ですね?」
「そうよ。私も付いて行けたら良かったんだけど、今からクランの方で集まりがあるから…」
「あたしも、そっちに行かなきゃいけないのよね」
 すまなさそうにするレイミアさんとまゆぴさんに、私は笑顔を向けた。
「それじゃ先輩方、行ってきます!」

 こうして、私…珠呂の旅が幕を開けた。
 私は、記憶を見付ける事が出来るだろうか?
 それ以上に、この道先に何が待っているのだろう?

 楽しみでもあり、恐くもあり…複雑だけど、確かに言えることがある。

 私の旅は、ここから始まるんだ!!

〜Fin〜

Special thanks to まゆぴ、レイミア


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送